「はあ〜、ねえカカシせんせー。プレゼントって何もらったら喜んでくれると思う?」
 最近のナルトはやたらとため息をついて、常に忙しそうだった。
 その原因は、どうやらナルトは密かに想っている相手がいるようで。
 カカシはすぐさまこう言った。
「俺だったらナルトそのものをもらったら嬉しいけどね!」
「はあ?せんせー何ワケわかんないこと言ってるんだってば」
 とっても冷めた目で軽く言われてしまって、カカシはめげた。
 それでも諦めずに聞くことは聞いた。
「・・・それで誰になんでプレゼントなんてするの?」
 そこでナルトはちょっとだけ照れたように言ったのだった。
「いつもお世話になってるから、お礼も兼ねてプレゼントでも贈ろうかなと思ったんだってば」
 ナルトはそれだけ言うと、恥ずかしそうにさよならを言って、カカシの前から去っていってしまった。
 一方カカシはぽつんとその場でしばらく佇んで。
「大変だ・・・」
 と、一言言った。
 
 
花婿争奪戦!
 
 
「それはオレのことを言ってたんだな、ナルトのやつめ・・・」
 急にほほを染めてどこかの世界に旅立ってしまったサスケを見て、カカシは思わず舌打ちした。
 
 こんなバカに相談なんて持ちかけるんじゃなかった。
 サスケなら少しは何か知ってるかと思って頼ってやったのに。
 勝手に都合よく夢見やがって・・・!
 
「いいや。わしだよわし」
 はっとしてカカシとサスケが振り向くと、自来也が得意そうに立っていた。
 ここは修行場。
 カカシ、サスケ、自来也といった組み合わせでこのような場所にいるなんてまず考えられないだけに、異様な光景だった。
「だって、わしはあいつにたくさん欲しいものをくれてやっとるからの〜」
 今日も一緒に買い物する予定だし。
 自来也は得意げに言って自慢するつもりだったのだが、その言葉は逆効果だった。
「「何だと・・・?」」
 カカシとサスケの殺気にあてられて、三忍の一人といえど、ただの上忍・下忍のナルトに対しての執念には思わず身を引かせるほどの迫力があった。
「いや、ま。そういうわけだからじゃあな」
 自来也はそそくさとその場を去ろうとしたけれど、二人に長い髪の毛を掴まれた。
「おい、放せっての」
「俺も不安ですから一緒について行きますよ」
「ああ、オレも付いていくぞ」
 自来也は「いらん!」と、何度も言ったけれど、いいかげんここで言い合いをしていても埒があかないうえに、このままでは遅刻をしてしまう。
 せっかくナルトと二人っきりのデートだと言うのに、いらないコブが二つつくことになろうとも、ナルトを怒らせたくはなかった。
 自来也はため息をつくと、そのまま髪の毛で二人を集合場所まで引っ張っていった。
 ただカカシとサスケに自慢するだけのために来たというのに、とんでもないことになってしまって、自来也はため息をついてしまう。
 
 
 着いた先は最近できた有名なデパートで、人で賑わっていた。
「あっれー?カカシせんせーにサスケまで来てくれたんだってば?」
 ナルトを発見すれば、いきなりそんなことを言われて、自来也はかなりショックだった。
 
 誰でもいいのか、ナルトよ・・・。
 
「じゃあみんなで買い物だってばよ〜」
 嬉しそうに店の中へ入っていくナルトに、みんな慌てて追いかける。
「あいつ、何が欲しいのかなぁ」
 ナルトはそう言って、色々なものを見て回るが、どれも変なものばかりだった。
 ガラクタやら、子供の持つようなおもちゃやら、全然関係なさそうな植木鉢や、食器など日用家具から雑貨・文房具など、無差別にナルトは見て回った。
「ナルトよ・・・。その相手は何が好きなんだ?もしかしてエロ本とかか?」
 自分が好きなものをあげて、期待を込めて言った自来也だが、ナルトは気がつかずに返事をする。
「そんなの好きなわけないってばよ!・・・でも何が好きかよく分からないんだってば」
「じゃ、イチャパラじゃない?」
 カカシもすかさず自分の好きなものをあげて、期待を込めて聞いてみた。
「だーかーら、そんなもん好きなわけないってば!」
「じゃあ、おかかの入ったおにぎりだな」
 サスケがそれでは自分しかない!といった感じで名乗り出る。
「・・・さあ・・・?」
 薄い反応で、簡単に返されてしまい、サスケは一瞬めげた。
 
 もう少し長い返事を期待してたぜ・・・!
 
 問題はそこかと突っ込みたくなってしまいそうだ。
「でも分からんぞ!そいつはエロ本が好きかもしれんだろ。もう、呼び名からしていかにもって感じだろうしの」
 今度は自来也は自分しかいない!というのをアピールするべく、新しい作戦にでた。
「いやいや。イチャパラいつも読んでたら、そいつがイチャパラ好きだってすぐ分かるもんでしょ」
「そいつは昼飯にいつもおかか入りのおにぎりを食べていただろう。思い出せ」
 すかさずカカシもサスケも自来也に負けじと同じ作戦に出て対抗する。
「う〜ん。どれも違うってばよ」
 三人ともナルトからのプレゼントをどうしてももらいたかった。
 誰かは分からないが、ナルトを知らぬ間に奪うなど許せなかった。
 だから躍起になってナルトに質問などをしているのだが、いまいちはっきりしたことが分からない。
 こうなれば、そんな人間のことは忘れてもらって、プレゼントをもらってしまおうという考えに三人はいたった。
「ナルト、今日は暑いからアイスでも買ってやろうか」
 さっそく自来也がナルトを誘い込んだ。
「まじで!?やった〜」
 すぐに自来也についていってしまったナルトに、カカシもサスケもつい出遅れてしまった。
「なんなら前から欲しがっていたゲームも買ってやるぞ」
 自来也が気前よくそう言うと、ナルトはまた嬉しそうについていく。
 餌で釣って自分のことだけ考えるように、自来也はものの数分で10品以上はもうナルトに貢いでいた。
「仙人、大好きだってばよ〜」
 ぎゅっとナルトに抱きつかれて、自来也はだらしなく鼻の下を伸ばして、夢の世界に逝っていた。
 その隙にナルトはどこかへ行ってしまったが、自来也はまだ気がつかなかった。
「やっぱり!我愛羅じゃんか」
 ナルトは自来也に抱きついたときに、ちらっとある人影が見えて、さっさと自来也から離れてしまったのだった。
 そうしてその人影があの我愛羅だったのだ。
「お前は・・・」
 彼は文房具屋で買い物をしていたらしく、大事そうに何か四角いものを抱えていた。
「久しぶりだってば!我愛羅は何か買ったの」
「ちょっと写真たてを買っただけだ」
 我愛羅の持っている四角いものは、とても写真たてとは呼べないほどの大きさだった。
「それで何の写真を飾るんだってば?やっぱ、兄弟の写真とか?」
 ナルトは我愛羅が最近兄弟のテマリたちとうまくやっているのを知っていたから、すんなりそう思った。
 何故知っているのかというと、我愛羅が最近まめにナルトに手紙を送るようになったからだった。
 ナルトは筆不精なので、中々返事が返せなかったけれど、我愛羅はそんなことは気にしないで手紙を送り続けていたのだ。
 もちろん、その真意は少しでもナルトと交流を持ちたいという、淡い感情からだったのだが、ナルトはもちろんそんなことには気がつかない。
「これは違う」
 我愛羅は、一言そう言って、じっとナルトを見つめた。
 この額縁のような写真たては、実はナルトの写真を飾ろうとしていたのだ。
 そのことをさりげなく言って、自分の気持ちを分からせたかったけれど、我愛羅はナルトの顔をみすぎて恥ずかしくなって目を逸らしてしまった。
 
 何やってる、オレ。
 
 そう思ってみても、照れた顔なんてナルトに恥ずかしくて見せられない。
「何?どうかしたの」
 顔を覗き込んでこようとするナルトに、我愛羅は困ってしまった。
「そこだ!そこで告るんだよ、我愛羅!」
 柱の影で、熱心に我愛羅にエールを送るのは、テマリで・・・。
「おい、もうやめろよ。お前かなり怪しいって」
 見かねたカンクロウが止めに入るけれど、テマリは聞いちゃいなかった。
「姉さんが見ててあげるから、しっかりあの子をゲットするんだよ。そしてゆくゆくはあの子を我愛羅の婿に・・・」
「聞いちゃいねえ・・・」
 目に炎を燃やしているテマリに、カンクロウは諦めてナルトを見やる。
「まあ確かに男にしては可愛い顔してるけど・・・」
 婿にしたいって騒ぐのは何か間違ってるじゃん?と、正しいことをカンクロウは一人つぶやいた。
「待て!」
 そこでいきなり登場してきたのはサスケだった。
 自来也に出遅れて必死でナルトを探して見つけたと思えば、ナルトは我愛羅といい雰囲気で立っていたので、サスケは慌てて声をかけた。
「オレは、オレはナルトが・・・」
 サスケは慌てて告白しようとするが、はやり勇気が出ないのか、そこで止まってしまった。
 真っ赤な顔をしてうつむくサスケに、ナルトはまた?マークを浮かべる。
「やっぱり甘いね」
「!?」
 いきなりカカシが登場したかと思うと、急にナルトを抱きかかえてどこかへ連れて行こうとした。
「てめ、それは卑怯だぞ!」
「お前が甘いんだよ」
「何言ってんのか分かんないけど、離せってば〜!!」
 カカシとサスケの言い合いをさえぎって、ナルトは叫ぶが、もちろんカカシもサスケも聞いちゃいなかった。
「ナルトが嫌がってる。離せ」
 すかさず我愛羅が口を挟んでナルトを助け出そうとするが、逆効果だった。
「へえ、珍しいところで会ったね。けれど、お前にもサスケにもナルトは渡さないよ」
 カカシはそう言うと、ナルトを抱えたまま店から出て行ってしまった。
「待てーい!」
 途中で自来也も追いかけてきて、大掛かりな鬼ごっこが始まった。
「どうなってんだってばー!誰か助けろってばよ〜」
「わしが助けるぞ!」
 自来也はそう言うと、ナルトの身も危ないというのに、カカシに向かって手裏剣を投げてきた。
「「「ナルトが危ないだろうが!」」」
 三人に一気に突っ込まれたけれど、結果的にはナルトをカカシから離すことに成功した。
 ナルトはすかさずうまくバランスをとって、着地した。
「ふう・・・。あ!」
 そこですぐに何かに気がついたのか、嬉しそうにどこかへ走っていってしまう。
 その嬉しそうなナルトの顔を見て、自来也・カカシ・サスケはぴんときた。
 
 ナルトがプレゼントを渡したいやつだな・・・!
 
 ナルトが走る前に、自来也から貢いでもらったプレゼントを適当にあさってもっていったのを見ていたからだ。
 我愛羅だけ、ことの起こりを大人しく見ていた。
「わしのナルトをたぶらかしやがって・・・。許さん!」
「オレからナルトを奪えると思わないでよね」
「誰だか分かんないが、絶対オレのほうがいいはずだ!」
「・・・?」
 自来也・カカシ・サスケといった順番でそういきまいてナルトを追いかける。
 我愛羅も分からないなりにナルトのことが気になるのでついていった。
 ナルトが消えた角を曲がれば、ナルトは立ち止まっていて、嬉しそうにある人物の名前を言った。
 
 
「いの!」
 
 
「「へ・・・?」」
「「誰だ・・・」」
 前の二人はカカシとサスケ。
 あとの二人は自来也と我愛羅だった。
 
「ナルト。今日も花買いに来たのー?」
 いのは実家の花屋の配達の手伝いの途中だったらしく、花を抱えていた。
「今日は違うってば。あ、それオレが持つってば」
「いいの?悪いわね、ありがと」
 いのがにっこりしてナルトに微笑みかけると、ナルトは心なしかほほが赤くなったような気がした。
「いいんだってば!今日は日ごろの感謝をしに会おうかと思ってたところでさ」
 そのナルトの言葉に、三人は愕然とした。
「ま、まさか山中いのが・・・?」
 カカシは柄にもなく混乱しているようだった。
 そこで自来也が落ち着いて判断をする。
「いや。そう考えるのはまだ早い。ただ純粋に何か感謝することがあっただけかもしれんだろ」
「そうだ。あいつは花屋をしてるから、よく植物を育ててるナルトは世話になっているという話なだけかもしれないしな」
 サスケは自来也に便乗していった言葉に、言いながらこれはかなり的を射ているのではないかと思った。
 みんなそのサスケの意見に賛成のようで、満足して頷いていた。
 けれど、ナルトは相変わらずちょっと照れたような顔をしていた。
「あのさ、何かお礼したいと思ったんだけど、いのは何が好きか分かんなかったから、いつものコレあげるってば」
 そうして取り出したものは、自来也がナルトに貢いだものの中の一つで、プリンだった。
「お礼って。嬉しいけど、何でそんなこといきなりしようとしたのよ?」
 いのがさらに聞けば、ナルトはその分だけ顔を赤くする。
「いや。いつも他の店と違って普通に接してくれるし、よくおまけしてくれるし、いのの父ちゃんにもやさしくしてもらってるしさ・・・」
「ああ、そんなこと。別にいいのよー。あれはお父さんが好きでおまけとかしてるだけだし。ナルトのことがすごく気に入ってるのよねー。なんせ、婿にしたいとかとんでもないこと言ってたしさ」
 いのがおどけてそう言った途端、大きな声が聞こえてきた。
 みんないっせいに言ったものだから、何を言ったのかいのにもナルトにも分からなかったが。
 内容はこんなものだった。
「何だとー!?ナルトはわしが死ぬまでずっと付き添う仲だと決めてるのに!!」
「ナルトは俺がもらうことになってるのに!!」
「オレのナルトを横取りする気か!!」
「ナルト・・・」
 約一名だけ大声ではなかったが、みんな次の瞬間固まってしまった。
「婿だなんて、オレってばまじに受け止めるってばよ」
 顔は赤かったけれど、ナルトは勇気を出していのに言った。
「!・・・それでも私は全然構わないけど」
 いのも顔を赤くして俯いた。
 しばらく恥ずかしくて無言でいた二人だったが、急にまた大きな声が邪魔した。
「「「「そんなの駄目だー!!」」」」
「うわ!まだいたの、みんな」
 みんなを無視して勇気をだしたナルトは、まだみんながいることをすっかり忘れてしまっていた。
「さ、せっかくだからうちでお茶でも飲んでいきなよ」
 いのはそう言って四人を無視してナルトの手をさりげなく引いて、みんなの前から姿を消した。
 
 思わずひざをついてがくりとした四人だったが、翌日にはまた回復してナルトを追い回した。
 自来也もカカシもサスケも、「今度はこっちがナルトの嫁になるから、婿に来てくれ!」と、どこか根本的に間違ったアピールを続けた。
 我愛羅は相変わらず積極的なことは言えずに、手紙にそれらしいことを書いていたが、当然ナルトに気がつかれるはずもなかった。
 
「早く本当に婿に来てよね、ナルト」
 いのがため息をつきながら言った言葉にも、ナルトは真っ赤になって、それでいて嬉しそうに笑った。
 そんなナルトを見て、こっちの苦労も知りもしないで・・・。と、いのは思ってしまったけれど、ナルトがこんなに幸せそうに笑うならいいか、と思った。
 
 いのと四人の男達の戦いは始まったばかりだった。
 
 
 
 
 
終わり

さくら★さまへ19000打キリリク作品です。
ナルト総受けで、最後は誰がナルトを手に入れるかお任せとあったんですが・・・。
ノーマルで申し訳ありません。
いのナル好きでして・・・。
返品可ですので、そのときはどうぞご報告を(^^;)
 
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