BLドリーム4
レンアイIQ
「君!昨日すごい熱出したんだってね、もう大丈夫なの?」
あやめはが普通に元気そうなので嫌味っぽく言う。
「昨日はテスト前最後の練習だからかなり忙しかったっけ」
重ねて嫌味を言われてしまい、はうんともすんとも言えなかった。
「え、えと・・・」
正直に言おうとしたときに、何者かが後ろからに抱きついてきた。
また藤代かと思って振り向くと、間近に三上の顔があって驚いてしまう。
「三上!!藤代みたいに抱きつくなよ!!」
どきどきしてしまい、つい顔が赤くなっていると、
「ほら、まだちょっと顔赤いだろ。こいつまだ熱あるんだよ、無理はさせないように俺が責任持って見張っとくからよ」
三上はそう言ってに抱きついたまま教室につれていく。
はしばらくされるがままだったが、教室に入ってクラスメート達に冷やかされてやっと離れた。
「お、お前らついにデキちゃったのかよ!くそ〜、うらやましいやつめ!」
クラスメートの一人が三上を小突く。
「お前なんかにやるわけないだろ。もうこいつに手ぇ出すなよ」
そんな三上の台詞を聞いてクラスの女子はキャーキャー言っている。
男子はヒューヒュー言ったり、「が〜」などと悶絶している者もいる。
当の三上は調子に乗っての肩を抱いている。
つ、ついにとかキャーキャーとか手を出すなとかヒューヒューとか・・・。
こ・い・つ・ら・・・。
はついにぶちぎれた。
「いいかげんにしろ〜!!」
ちゃぶ台のように近くにあった机を盛大にひっくり返しては叫ぶ。
「何でそんなたわけた事をみんな信じるんだよ!普通男同士なんてありえないことだろが!信じるなよな!!」
「そんなに照れることないだろうが」
そう言って三上はまだ調子に乗っているようで、の腰を抱く。
「離せ変態!」
無理やり三上から離れてはさっさと席に着く。
「俺はお前なんかに構ってやる暇は無いんだよ」
言いながらは社会の教科書を取り出して読み始める。
そんなの異常な様子にクラスメート達は心底驚いてしまった。
「あのが社会の教科書を開いているだとう!?」
「ありえん。今日は天気予報、槍が降るって言ってたか?」
「いいや、槍どころじゃないだろ」
の周りでみんなが好き放題に騒ぐので、はまた机をひっくり返す。
「だああ〜っ!うるせえ!集中できんだろうが!!」
が叫んだところで、担任が朝のホームルームのために教室に入ってきた。
「、何を騒いでるんだ。そんな余裕がお前にあるのか?」
「ぐっ・・・!」
普段のならここで言い訳をするのだが、大人しく社会の教科書を再び読み始めた。
そんなを見て、クラスメート達は「あいつマジに病気だぜ」と、好き勝手に言っていた。
何でも勝手に言いやがれ。
期末テストでどの教科も平均点以上取らないと武蔵野森から追放されちゃうんだ。
せっかく転校してきたのに、またどこかよそへ移るなんて嫌だからな。
それに・・・。
社会の教科書から目を離して、こっそり三上を盗み見る。
すると、の視線を感じたのか三上がを見つめ返してきた。
三上とばっちり目が合って今まで三上のことを見ていたのがばれてしまい、は恥ずかしくて慌てて目をそらした。
やば!何で三上のことなんて見てたんだよ。
しかも「それに」の後に俺何を思ったんだよ・・・。
三上はの視線は感じていなかったが、まだ真面目なが何となく気になって見たのだ。
普通だったら三日坊主にもなれないのことだから、へんな意地を張らずにさっさと諦めているはずなのだ。
それなのに、まだ勉強をする気満々だ。
そんな疑問はともあれ、三上は目が合った時のの顔に今は気を取られていた。
やっぱあいつ自覚は無くても俺のこと惚れてるな。
あんなに切なそうに俺のこと見つめて、目が合ったら照れて顔真っ赤にして目をそらして。
あれで俺に惚れてないって言うのなら他にどういう理由があるのか聞きたいぐらいだぜ。
三上はもうが自分のことを好きだと確信した。
は三上がそんなことを考えているなんて露ほども思わず、ホームルームはいつも通りぼ〜っとしていた。
三上はそんなを見て、今日にでもをモノにしてやる!と、誓うのであった。
そうと決まれば奴の勉強を教えてやって、教えてる間に口説きにかかるとするか。
まぁ学校でもチャンスはたくさんあるから、いつでも口説けるようにのそばにいるとするか。
「ここ間違えてるぜ」
ホームルームが終わるが否や、三上はすぐにの席に向かった。
「〜っほかっといてくれよ!俺は忙しいの」
三上がやけにひっついてきたので、は内心ドキドキしながらも無理やり押しやる。
「冷たいやつだな、俺様がせっかくお前のために教えてやろうと思ったのによ」
「邪魔するんならいいよ、もうどっか行っててくれよ」
は三上に見向きもしないで問題集とにらめっこしている。
「だから邪魔しないでお前に勉強教えてやるって言ってんだろ」
三上は無視されないようにの目の前に座って覗き込むように言ってみる。
だが、は問題集しか見ていない。
「おい、」
「・・・」
「おい!聞いてんのか」
「・・・・・・」
「お前俺より問題集のが大事なのかよ」
にやっと嫌味ったらしくデビスマで言ってみるが、は全く無視しきっている。
お得意のデビスマが効かないし、自分よりも問題集にしか相手をしていないので、三上は大人げも無く問題集にあたる。
「こんなの今からやったって、どうせ平均点以上取るなんて無理に決まってんだろ!」
三上はそう言いながら問題集をからひっさらうと、教室の隅に投げてしまう。
それを見てはとっさに手が動いた。
「いって・・・!」
ばしーん!と、派手な音が教室に響くと同時に三上は倒れはしなかったが体がぐらつく。
「そんなことやってもいないのに分からないだろ!!お前は人ががんばってるのにそうやって無理だって決めつけるようなやつだったのかよ!」
はそう言うと三上が放り投げた問題集を取りに行く。
「・・・」
三上が何か言いかけたときに、がかぶせるように言う。
「お前なんか嫌いだ・・・!」
は問題集を取ると、その言葉を残してどこかへ走っていってしまった。
教室はざわついていてみんなが三上を見ていたが、三上はそんなことに気づく余裕はなかった。
俺の馬鹿野郎!!
なんでこんなことになるんだ。
に相手にされないからって子供みたいに意地張って・・・。
これじゃあこれからずっと相手にされなくなるじゃねえか!
三上はにぶたれた頬の痛みより、心がズキズキして苦しい。
何より俺が馬鹿なのはを傷つけたことだ・・・!
を追いかけようとした三上だが、渋沢がそれを止める。
「まだやめておけ。今のお前たちが話し合っても、はお前の言葉に耳を傾ける余裕は無いはずだ」
「・・・」
それでも何でも追いかけて行きたかったが、確かに渋沢の言う通り、お互いちゃんと話し合える自信は無かった。
今は我慢して、寮に帰ってからゆっくりと話し合うことにした。
一方はというと、図書室に真っ黒なオーラを漂わせながらだれていた。
あ〜あ・・・、教科書もノートも筆箱も全部教室に置いて来ちゃったよ。
おまけにもうチャイム鳴ったから一時間目始まっちゃっただろうし。
真面目に授業受けようと思ったのに・・・。
は三上を殴った右手をさする。
人を殴るとやっぱ痛いな。
・・・心が。
は本当は三上のことなんて考えたくなかったのに、どうしても三上のことが頭から離れない。
右手よりも胸の痛みのほうが痛くて苦しい。
何であいつあんなこと言うんだよ。
この前はがんばれって励ましてくれたのに。
俺の気も知らないで・・・。
無理でも何でもやりとげなければ俺は武蔵野森から転校しなきゃいけないのに。
ここから離れたくないから・・・、お前から離れたくなんかないから俺はこんなに必死でがんばってるのに。
それなのにお前は無理だって言う。
お前に言われちゃ、俺がんばってる意味なんてあるのかな・・・。
は俯いて問題集を眺めていたが、急に視界がぼやけていって問題集に涙が落ちていく。
問題集が涙に濡れても構わずに、は泣きつづける。
でもどんなに三上のこと嫌いって言っても、離れたくないんだ。
こんなこと思うなんて俺はどうかしてるのかもしれない。
けれど離れたくないと思うのは事実なんだ。
三上に無理だって言われて怒れても悲しくても、平均点以上取らなければ三上と離れてしまうのも事実で。
俺ががんばらなきゃいけないんだ・・・。
結局、はあれからずっと図書室にいて勉強をしていた。・・・つもりだったが、泣き疲れて寝てしまったらしく、掃除の時間に起こされるまでずっと爆睡をしてしまったらしい。
「もう掃除の時間だとう!?」
図書室の掃除係の少年が親切にを起こしてやったのに、起きるや否や大声で叫ばれ胸倉を掴まれてしまい、ただただ少年は怯えるだけだった。
そんな憐れな少年を気遣うことなく、はいきなりダッシュで自分の教室に戻った。
いつの間に掃除の時間になってたんだよ!
今日の授業俺全然聞いてなかったし!!
でも、今なら三上も別の場所で掃除してるし、これで教科書とかを取りに行けるぞ!
は教室の近くまで着くと、三上がいないか注意しながら歩いていた。
すると、
「」
後ろから急に声をかけられは驚いてしまう。
「うわっ!?・・・なんだ渋沢か、驚かすなよ」
「あ、悪いな。三上だと思ったのか?」
は「三上」という名前を聞いただけで過敏な反応を見せる。
「あんな奴のことなんかもうどうでもいいんだよ!これから俺の前でそいつの名前出すなよ!」
「、三上は悪気があってあんなことを言ったわけじゃないんだ。お前も本当は分かってるんじゃないのか」
渋沢はに言われたことを無視して三上の名を言ったが、はそれよりも渋沢が自分のことを素直じゃない奴だと言っているように聞こえて気に食わなかった。
「・・・わかんねえよ!もう俺、今日は帰ることにした。先生にはさぼったって言ってくれて構わないから」
そう言っては荷物を取ると、さっさと教室から去って行ってしまう。
「まったく、お互い素直じゃないな」
今はあまり呑気にそんなことを言っている状態じゃなかったが、思わず渋沢はそう呟いてしまう。
あんなに手が早い三上がこんなにてこずっているなんて、よっぽどのことを本気で好きなんだろうと、渋沢は思っていた。
「しかし・・・、まどろっこしいな」
早くと仲直りして、さっさとをオトしてこれ以上変な心配をさせないでほしいというのが渋沢の本音だった。
「おい、何こんなところでボーっと突っ立ってんだよ」
掃除が終わったらしい三上が、交通の邪魔だと渋沢にはんば八つ当たりのように愚痴る。
渋沢はワザとらしくため息をついて言う。
「がさっき来て、もう今日は帰るって言ってきたんだ」
「・・・そうか」
また渋沢は一つため息をついて三上に言う。
「もちゃんと分かってるはずだ。だからちゃんと謝って、しっかりくっついてくれ。もう俺はこれ以上いらない心配はしたくないぞ」
心配しなきゃいいじゃねえか。と、いう言葉は言わないでおいて、三上は
「・・・ああ。俺あいつのところに行ってくる」
と、渋沢に言ってその場を去った。
やれやれ、と言った感じで渋沢はまたため息をつく。
こんないらない心配ばかりしていたら、本当に俺はみんなより先に歳をとってしまうんじゃないかと渋沢は不安になってしまった。
「で、俺は二人分の欠席の理由をどうやって言い訳するんだろうな」
は寮に帰るとすぐに問題集に取り掛かったが、どうしても三上のことから頭が離れずに集中できない。
「何もかもあいつのせいだ!」
どんなに問題集に集中しようとしても、いつの間にか歴史の年号じゃなく、三上のことばかり口にしていた。
こんなにムカムカするのもあいつのせいだし、こんなに問題に集中できないのもあいつのせいだ。
それに・・・、あいつがいなかったらこんなに武蔵野森から追放されたくないからって一生懸命勉強なんてしなかった。
どれもこれも全部あいつのせい。
でも何でこんなにあいつのことが気になるんだろう。
どうでもいい奴なら何であんなにやる事なす事いちいち気になるんだろう。
いや・・・本当はもう俺は気づいてる。
何でかってことに。
がそんなことを考えているうちに、いきなりドアをノックする音が聞こえてきた。
いきなりの事だったので、こんな早い時間に人が訪れるなんてことに、なんの不信も抱かずには「は〜い」と返事をするとそのままドアを開ける。
「どちら様・・・!?」
ドアを開けた瞬間にいきなり腕を掴まれて、そのまま部屋に引きずり込まれてしまう。
いきなりの事だったので、はパニック状態だ。
「んなっ・・・、誰・・・!?」
なんとか掴まれた腕をほどいては振り返ろうとしたが、その前に腕を掴んでいた本人が名乗る。
「俺だよ」
「み、三上!何でお前っ・・・」
普通ならまだ学校で授業を受けているはずだ。
なので、驚いてしまっては思わず三上に口をきいてしまう。
「さっきは俺が悪かった。ごめんな」
の顔を真っ直ぐ見つめて三上は本当にすまなそうに謝る。
いつも偉そうな顔の三上が本当にすまなさそうな顔をするのでは戸惑ってしまう。
けれど、そう簡単に許すつもりはなかった。
「謝ってももう俺三上のことなんて嫌いなんだよ。もう出てってくれ」
「嫌いでもかまわねえ。俺はそれでもきちんとお前に謝りたかったんだ」
「・・・じゃあもう用は済んだんだろう!帰ってくれよ!」
ただ自分のためにけじめをつけに来ただけなんじゃないか。
人を傷つけたから謝らないと自分のためにならないってことなんだろ。
そんなことで謝られても俺は全然満たされない。
・・・余計お前を許すことなんて出来ないじゃないか。
は三上がどうしようがもう絶対に関わらないと決めたので、三上からそっぽを向いて早く部屋から出て行くのを待っていた。
だが、三上はまだの部屋から出て行こうとしない。
は無視を決め込むつもりだが、このままずっとここに居られたら迷惑だから早く出て行ってほしいと思っていた。
しかし三上は思いつめた顔をしていたと思ったら決心したのか、また話し出す。
「こんなこと言ったら驚くかもしれないけど、俺は本気だから聞いてほしい」 「・・・?」
「俺はが俺のこと嫌いでもなんでも構わない。それでも俺はお前のことが好きなんだ」
「え・・・?」
はしばらく何も考えることができなかったが、少し経っていきなり三上を部屋から追い出した。
「ふざけるなよな!変なこと言わないでもう俺の勉強の邪魔をしないでくれよ!!」
ドア越しに案外冷静な三上の声がしてくる。
「お前の勉強の邪魔になるのは悪かった。だけど俺は本気でお前のことが好きなんだよ」
「・・・もう俺に話しかけないでくれよ!どんなに三上が言ったって俺は信じないからな」
そう言ってはドアの鍵を掛けて、もう完全に三上の相手をする気はないようだった。
三上は、今日はもう何を言っても聞いてくれないだろうと思って、大人しく自分の部屋に帰った。
ずっとドアに寄りかかって聞き耳を立てていたは、三上が去っていったのが分かると、知らず知らずのうちにため息が出た。
・・・何であいつあんなこと言ったんだろう。
いつもの冗談には聞こえなかったけど、それで何で俺なんだ。
・・・本当なのかな・・・。
本当だとしたら・・・。
そこまで思ってははっとする。
何なんだよ俺は。
三上のことなんて嫌いだって思ってるくせに、結局のところあんなこと言われて喜んでるんじゃないか。
・・・でももし三上とケンカしてなくてさっきの言葉を聞いたら俺は何て言ったんだろう。
勉強をするのも忘れては三上のことばかり考えていた。
そんな時三上はと言うと、帰ってきた渋沢に説教を食らっていた。
「何でそこまで言っておいてそのまま引き下がるんだ?いつもの押しのよさはどこにいったんだ」
「でもそんなに強引に押したって、またを傷つけそうじゃないか。これ以上あいつを傷つけたくねえんだよ」
三上からそんな真摯な台詞が出るとは思わなくて、渋沢は驚いてしまう。
「本当にお前らしくないな」
と、だけ渋沢はなんとか言えた。
「うるせえよ。俺はマジに惚れてるんだよ!わりいか」
「いや、悪くないんだがあまりにお前らしくない言葉で驚いただけだ」
「失礼なやつだな」
三上は言葉のわりに怒っているわけではなく、あまり元気がないようだ。
「・・・はお前になんて返事をするんだろうな」
「返事してくれるならまだいいけどな」
三上はに許してもらえずに、話も信じてもらえなかったので三上は沈んでいた。
渋沢はそんな三上を見ていつもの様に励ます。
「そんなに暗くなるな。お前たちは今ケンカしてるし、はいきなり言われて恥ずかしかったから信じないとか言ったのかもしれないだろ」
「そんなに楽観的になれたらこうして苦労してねえよ」
「まあ、まずはと仲直りしなきゃだな」
「・・・ああ」
まったく渋沢としてはまどろっこしいことこの上ないのだが、三上も真剣に悩んでいるので気を遣ってしまう。
本当に早く仲直りをしてほしいもんだよ、と渋沢は今日何度目かのため息をついてそう思った。
しかし、そうこうしているうちに期末テストがもう明日に差し迫ってきた。 三上は何度かに話し掛けたが、いつも無視をされてしまった。
は見た目には勉強に忙しそうに見えたが、実際は違っていた。
もう明日からテストか・・・、俺結局ほとんど勉強できなかったな。
あれから三上はずっと何か俺に話し掛けてきたけど、俺もよく今まで無視し通すことができたよな。
勉強に集中しようと思っても、あの三上の言った言葉ばかり頭に入ってくる。
俺マジに重症かも。
は部屋に虫が入ってくるのも構わずに、窓を全開に開けて夏の夜風を味わっていた。
明日からテストが始まるというのに、もうはすでに諦めたのか部屋に帰ったらずっとこの調子だ。
「俺、どうしちゃったんだろ」
ここに転入してきて三上に会ってから俺はなんだか変になってた。
普通、こんなにも男のことなんて気にしてなかったのに・・・。
・・・いいかげんに認めた方がいいのかもしれないな。
でも俺は・・・。
そこまでが考えた時に、いきなりベランダから物音が聞こえた。
「ど、泥棒!?」
慌ててはベランダに駆け寄った。
けれどそこに居たのは泥棒じゃなく、今のにとっては泥棒よりも厄介な人物だった。
「・・・俺だよ」
「み、三上!勝手に人のベランダから入ってくるなんて何考えてんだよ!」
はそう言いながら三上を窓から押し出して部屋に帰らせようとする。
「それは悪かった。けどどうしても俺はお前と話しをしたかったんだよ」
「俺はお前と話すことなんて何もない」
はまた三上を押しやる。
「俺はある。俺がお前を好きだってどうして信じてくれないんだよ」
「当たり前だろ!男が男を好きなんて冗談言ってるとしか思えないじゃないか!」
は必死で三上をベランダから出そうとするが、三上はびくともしない。
「冗談なんかじゃない。俺はこんな冗談なんか言わない」
「そんなこと俺が知るかよ!勉強の邪魔だからもう出てってくれよ。明日テストなんだから邪魔すんな!」
「・・・テストぐらいもういいじゃねえか。それで取れなかったとしても退学になるわけでもねえんだし」
三上のその言葉には頭に来た。
「なるんだよ!このテストでどの教科も平均点以上取れないと俺は他の中学に移んなきゃならないんだ!!」
「なっ・・・」
は感情のままに勢い余って三上の胸倉を掴む。
「そんなこと俺は一言も聞いてないぞ!本当なのかよ!?」
三上もに胸倉を掴まれたまま勢い余ってを壁に押す。
「本当だよ!だから俺はこんなに必死でがんばってたんじゃないか・・・!全部お前と離れたくないからがんばってたのに、それをお前は無理だって言って!お前は全然俺のこと・・・」
が途中で泣きながら激しく三上を非難していたが、三上はそこまできて慌ててを止める。
「ちょっ・・・ちょっと待て、今お前俺と離れたくないって言わなかったか?」
しばらくは頭に血が上って何を言ったか考えていたが、いきなりはっとすると顔を背けて否定する。
「い、言ってない!お前だけじゃなく渋沢たちのことを言うのを忘れちゃっただけだ!お前が目の前にいたからたまたまだ!!」
そうは言うが、覗き込んで見てみると顔は真っ赤で耳や首の辺りまでも赤かった。
これはもしかするともしかするかもしれない、と三上は思って、ついいたずら心が湧いてくる。
「・・・そうか、じゃあもう俺はいっさいお前と関わらないようにする。それでお前は満足ならいい。それじゃあ、これからもいいクラスメートでいようぜ」
そう言って三上は今にもベランダに足を掛けての部屋から出ようとする。
はとっさに三上の腕を掴んでしまう。
だが、三上は今までのことを思い出してまだ演技をすることにした。
「どうしたんだよ、。明日からテストなんだろ。まあ、お互いがんばろうぜ。じゃあな」
そう言って三上はまたベランダに向き直ると、今度こそ自分の部屋に戻ろうとする。
「待てよ・・・!お前俺のこと好きだって言ったくせにそんなに簡単に諦めていいのかよ!?」
「好きだけどは信じないんだろ。だったら別にには関係ないじゃないか。何で俺を止めるんだよ」
三上がそう言うとは黙り込んでしまった。
ちょっと虐め過ぎたかな、と三上が思っていたら突然勢いよくの部屋に引き戻される。
「そんなこと知るもんか!ただ俺は・・・」
どうしていいのか分からないんだ。
このまま三上のことが好きだなんて絶対に言いたくないし、俺はあいつのことなんか信じてないし・・・。
でも何も言わなかったら三上はもうただのクラスメートになってしまう・・・。
三上はの心の中が手にとるように分かっていた。
本当にこいつは素直じゃねえな。
さっさと俺に抱きつくなり何なりすれば俺はちゃんとお前のしてほしいように事を運ぶってのに。
本当にこいつ恋愛音痴だな。
三上がそんなことをつらつらと考えているうちに、はまた三上に話しかける。
「・・・お前は俺のことを諦めるってことなのか?結局そんな簡単に諦められるならやっぱり嘘だったんだな」
その言葉にはさすがに三上も切れた。
いきなりの腕を掴んで引っ張る。
はとっさに殴られると思い、目を瞑った。
しかし、頬には何の痛みも無く、代わりに唇に柔らかい感触があった。
「ん!?んぐっ・・・!!」
いきなりのことだったので、しばらく経ってからは自分が三上にキスされていることに気が付いて慌てだす。
随分時間が経ってから、ようやく三上はを離してやる。
「な、何すんだよっ・・・」
はぜーぜー荒い息をつきながらやっとそれだけを言えた。
「キスだよ。そんなのもわかんねえのか」
「違う!俺が言ってんのは何でそんなことをしたかって言ってんだよ!!」
「何で?決まってんじゃねえか、お前のことが好きだからだよ」
もう何がなんだかには訳がわからない。
「さっき俺のことを諦めたみたいに言ってたじゃないか!!」
「アホか。んなこと俺は一言も言ってねえよ。お前が勝手に勘違いしたんじゃねえか」
三上はまたキスできそうなくらいに近づいてくると続けて喋りだす。
「でも俺の言うことを信じないお前には、俺が何を言おうと関係ないんだろ。なのに何でお前は諦めるとか諦めないとか俺に聞いて来るんだよ。挙句の果てには俺が勝手に諦めたって決めつけるしよ」
が何も言えずに黙っていると、三上がまた話し出す。
「俺は諦めてなんかいない。何度お前に嫌いだって言われても好きでいる自身がある」
三上はいつもの嫌味ったらしい笑みでなく、本当に自信の満ちた笑みでにそう言った。
はため息をついた。
「もういいや。何か自分が馬鹿らしくなってきたよ。っつーか、お前には負けた」
はそう言うと、ぎこちない動作で三上に抱きついた。
三上は抱き返して冷静に先を促す。
「ふ〜ん。それってどういうふうに読み取ればいいんだ?」
「んな!!んな事ぐらい分かれよ!」
ははっきり三上に「好きだ」と言うのが、照れくさいやら癪に障るわでできれば言いたくなかった。
しかし、それを許すほど三上は優しくなかった。
「わかんねえよ。っつーか、言わないで分かってもらうなんてそんな都合のいいこと考えてるんじゃねえよ」
「だ、だってよぅ・・・」
はそう言いながらワザと上目遣いで可愛らしく言ってみる。
かなりのダメージだったが、三上はなんとかそれを表に出さないようにしてまたに迫る。
「んで?言うのか言わないのかはっきりしろよ。言わなきゃ俺たちはこれからずっとただのクラスメートだからな」
「うっ・・・」
は混乱してしまい、それならもうそれでもいいかもなんて思っていた。 三上は何となくそれが分かったのか、
「お前・・・それならいっそのこともうそれでいいなんて思ったんじゃねえだろうな」
と、に問い詰める。
「う・・・、ま、まさかそんな・・・ねえ・・・?」
はとっさに誤魔化そうとしたが、三上の不信な顔を見て失敗したと分かると前よりも慌てだす。
せっかく自分の気持ちも分かって素直に認められたと思ったら、今度はさらに三上に告白しろだなんて酷すぎる!と、何が酷いのか分からないがは心の中で虚しく叫んでいた。
そんなの心の雄叫びを知ってか知らずか、さらに三上はを追い込む。
「違うんなら早く言えよ。あと10秒以内に言わなきゃお前は俺のただのクラスメート決定だからな」
がどうしようか困っているうちに、三上はもう10秒を数えだしていた。
「え、ちょっ・・・、待てよ三上!」
しかし三上は無視したままカウントし続ける。
はどうにか止めようと喚いていたが、残り三秒で慌てて叫んだ。
「すきだー!!!」
ほとんどやけっぱちでは叫んで、恥ずかしいのを誤魔化すかのように三上に抱きつく。
しばらく三上に抱きついていただったが、三上が何の反応も無いのでは恐る恐る三上の顔を覗き込んだ。
「みか・・・みっ!?」
またいきなり三上にキスをされてしまい、は逃げようと必死でもがく。 やっと開放されたと思ったら、三上が呆れたようにため息をつく。
「お前なあ。何で両思いになったのに、キスされて嫌がってんだよ。ほんと恋愛馬鹿だよな・・・」
また三上はこれ見よがしにため息をついてみせる。
「何でかねえ〜、何でこんなにガキなんだろ〜な〜、色気もムードもぜんっぜんないしよ〜」
わざとだらけた口調で三上はに抱きつきながらそう言った。
「う、うるせー!ガキやムードはまだいいとして、色気はいらねえだろが!このエロ三上!」
「ほ〜、じゃあ今から早速真面目にエロ三上になってやろうか?」
そう言って三上はを近くにあったベッドに押し倒してしまう。
「なっていらんわい!!」
その時何だかんだ言っても両思いになって幸せだった二人は明日テストがあることをすっかり忘れていた・・・。
当然、次の日二人は「何でもっと早く俺に言わなかった!」とか、「お前が無駄とか言うからだろうが!」とか言いながらいつも通りもめていたが。
結果が出る日まで三上は両思いの嬉しさも忘れてひやひやしていたのに、の方はというとわりと呑気に過ごしていた。
期末テストの結果が掲示板に張り出され、誰よりも早くを引きずって見に行った三上だが、掲示板を見るや否や気が抜けてしまった。
「お前って・・・ほんと何者?」
今まであんなに騒いでいたのに、結局のところはどの教科も90点以上取っていた。
「だからIQ高いって言ったじゃん!」
嬉しそうにが笑って公衆の面前だというのに三上に抱きついてきて、三上はを抱き返しながら「ま、いっか」と思った。
「・・・けど恋愛のIQはお前この学校一悪いだろうな」
「何でそんなことが三上に分かるんだよ!」
「俺はお前のこと何でも分かってるつもりだぜ?この前の一日で全部な」
三上は意地悪くの耳元でそう言ってやると、急にはボッと音を立てて顔を真っ赤にした。
いつものなら何か一言ぐらい言い返しているはずなのに、三上に抱きつかれたまま固まってしまっていた。
あの日二人の間に何があったかは二人だけの秘密らしい。
≪爆終;≫
戻る