今日も木の葉中学は朝からにぎやかだった。
「それってばオレの昼ごはん〜!!」
「ふん、だったらなんで朝の授業中に食べるんだ」
 クラス委員のサスケはナルトが授業中に早弁しているのを見逃さずに、さっさとナルトから弁当を取り上げた。
 二人とも授業中なのにお構いなしに言い合いをする。
「腹が空いてしょうがな・・・、ああ〜!!」
 ナルトがしゃべっているのに、サスケは素早く弁当を自分のカバンに隠してしまった。
「返せってばよー!!」
「昼まで待て」
 サスケはそう言うと、どこか満足げにまた自分の席に座った。
 それをずっとぼーっと見ていた国語の教師でもあり、このクラスの担任の教師でもあるイルカは、思い出したようにナルトを叱るのであった。
「こら!ナルト!!授業中に弁当を食べるばかりか席を立ったままとはいい度胸してんな!」
 学内暴力で訴えられそうなくらい強力なゲンコツをナルトの頭に落とすと、ナルトはいつもどおりお馴染みの悲鳴をあげるのだった。
 こうしていつものように木の葉中学校の一日は始まるのだった。
 
 
境界線
 
 
「あ〜あ、何でサスケばっかり!あいつだって席立ってたじゃんかよ」
 授業が終わって放課中、ナルトはまだ納得いってないのかぶつぶつと文句を言っていた。
「そりゃあしょうがねえよ、サスケは俺らと違って優秀で、先公たちに期待されてるからな」
 キバがナルトの前の椅子に座って諭してやるが、まだナルトはつまらなさそうな顔をしていた。
「そうそう、ここの学校を一番の成績で入学してずっと学内試験一位だし、スポーツも万能だしサッカー部のエースだし言うことないもんね」
 チョウジが素直にサスケのことを言うが、それはもっとナルトを納得させなかった。
「サッカー部のエースはオレだってば!!」
 そこで今度はシカマルがため息をつきながらナルトを落ち着かせる。
「まあ、でもサスケだぜ?何でそんなにあいつと張り合おうとするんだよ。普通適うはずないと馬鹿でも分かるってのによ」
 が、当然逆効果だった。
「どうせオレってば馬鹿だってばよ!大体あいつを一目見た瞬間からオレは気に食わなかったんだってば。理由なんかないってばよ!」
 そう言ったナルトの目の中には炎が燃えたぎっていて、みんなナルトを止めることを諦めた。
 そんなやりとりをこっそりサスケが見ていたなんて、もちろんナルトは知る由もなかった。
 一見睨んでいるようにも見えるのだけど、実際のサスケの頭の中はこうだった。
 
 くっ・・・。相変わらず可愛いぜ・・・。
 オレたちが出会ったときのことを話してるなんて、オレもつい思い出しちまうじゃねえか。
 ・・・そうだ、あれは入学式のときだった。
 
 あいつはどんな血が混じってるのか、金髪碧眼でかなり目立っていた。
 もちろんオレも周りのやつらと同じで、あいつに自然と目がいった。
 学ランを着ていたからもちろん男だとは分かってはいたけど、目が合った瞬間そんなことはどうでもよくなった。
 お互いしばらく見つめあっていると、あいつから話しかけてきたんだ。
 
「何だってばよ!?オレに喧嘩売るんなら受けてたつってばよ!!」
 
 照れ隠しだと分かったオレは、ナルトにつられてつい憎まれ口を叩いてすぐに言い合いの喧嘩をしたけれど。
 まあこれでオレの顔は間違いなく覚えただろうし、あとはクラスが一緒になれば言うことなしだった。
 入学式が終わって自分の入るべきクラスに行くと、ナルトがいてオレはどんなに喜んだことか。
 あいつもきっとそのはず。
 オレを見て、憎まれ口を叩いてまた照れ隠しをしやがったからな。
 今思えば運命そのものだったと言えるな。
 
 
 かなり勝手な考えをしながらもずっとナルトを見ていたサスケだったが、ついに気がつかれたようだった。
「またサスケがこっち睨んでるぞ。お前よっぽど嫌われてんな」
 サスケがそんなことを考えてるなんて知りもしないシカマルたちは、本当に二人は仲が悪いんだな、と感心していた。
 当のナルトはそんなこと言われなくても分かってるってばよ!と、一人で騒いでいた。
 どこかいちいち言葉に出されるのは心外だとでも言っているようにも感じられた。
 
 
 そんなこんなで昼の時間。
「早くオレの弁当返せってばよ!」
 授業が終わるなりナルトはサスケの席に行って、手を差し出した。
 けれど、サスケは少しでも多くナルトと話していたいし、一緒にいたかったのでわざといじわるをしてやる。
「今度から早弁はしないと誓うんなら考えてやってもいいぞ」
 ナルトはすぐに返してくれなくていらついたが、我慢してサスケの言うとおりにした。
「分かったから、ちゃんとこれからは早弁はしないから早く返してほしいってばよ!」
 言ったそばからナルトのお腹は鳴って、本当にお腹が空いてそうだった。
「じゃあ今日は・・・」
 罰としてオレが見張ってやる。
 みたいなわけの分からないことを言ってナルトと一緒にいるつもりだったけど、急に邪魔が入った。
「それなら俺と一緒に弁当食べる?せんせー今日は多めに持ってきてるから構わないよ〜」
 先ほどの社会の授業の教師、はたけカカシだった。
「でも、ちゃんとオレ昼飯あるし」
「駄目駄目。サスケみたいなひねくれものは絶対返してくれないよ。それよりせんせーの弁当はおいしいよ〜」
 本当に社会の教師なのか疑問を持つような台詞でナルトを誘うカカシに、サスケは慌てた。
「んなわけあるか!ちゃんと返すに決まってんだろ!」
 そう言ってナルトに弁当を返すと、カカシは残念そうな顔をしつつもあっさり引いていった。
 
 何だってんだあの変態教師は・・・!
 いつもいつもオレの邪魔をしやがって!!
 
 サスケは怒りに任せてどかっと自分の席に座りなおすと、自分の弁当を広げて食べようとした。
「・・・なんだ。まだなんか用なのか?」
 機嫌が悪いせいか、いつまでも自分のところから離れないナルトにちょっときつい口調でサスケは聞いた。
 すると、ナルトは少し物怖じしたようだったけれど、すぐに立ち直って話し出した。
「サスケっていつも一人で弁当食べてるよな・・・。他に一緒に食べるやついないの?」
 サスケの機嫌が急に良くなってきた。
 
 何だ?何で急にこんなことを聞くんだ?
 もしかしてナルトのやつ、オレと一緒に弁当を食べたいのかっ・・・?
 
 期待に胸を膨らませながらも、サスケはそんなことを考えているなどと表には微塵も出さないで答える。
「それがどうした」
 ナルトは無言で自分の弁当をサスケの机に広げだした。
 サスケはもっと期待してしまった。
 
 や、やっぱりオレと飯を食いたいのか・・・!?
 
 だけど、どこか信じていないところが彼らしいといえばらしかった。
「たこウインナーもらったってばよ!」
 ナルトはすかさずサスケの弁当箱から真っ赤なたこさんウインナーを奪い取った。
「な、急に取ってんじゃねえ!」
 と、言いつつも、サスケの心の中は天国のように晴れ渡っていた。
 
 こ、ここここれは、俗に言う「間接キス」ってやつか!?
 
 サスケはたこさんウインナーに口をつけていないから、間接キスにはならないのだけれど、それに気がつかないほど舞い上がっていた。
「じゃあこれあげるってばよ」
 ナルトは細かく刻まれたピーマンをサスケの弁当箱に乗せてやる。
「・・・って、これはお前が嫌いなものなんじゃないのか?」
「ありがたく頂けってばよ!」
 ナルトはサスケの問いに答えないで、話をそらした。
「しかし、綺麗なたこウインナーだよな〜。いい母ちゃんだな」
 しげしげとサスケのたこさんウインナーを見てナルトは言った。
 それにサスケは気まずそうに答えた。
「いや・・・。それ作ったのはオレの兄貴だ・・・」
「ええ!?すっげー料理うまいんだな、サスケの兄ちゃんって!オレの弁当も兄ちゃんじゃないけど、父ちゃんが作ってくれたんだってばよ」
 見れば、ナルトもサスケもお互いとてもできのいい弁当だった。
 特にナルトの弁当は愛情がこれでもか!というほどこもっている弁当だった。
「へえ・・・」
 サスケは初めて見るナルトの笑顔に見とれていて、もうあまり話しは聞いていなかった。
 ナルトのほうは、いつもケンカしあっているサスケとこんな風にしゃべれるのがなんだか嬉しくて、話すのに夢中だった。
 だから、二人のことを物珍しそうに見ている人間がいるなんて二人は思ってもいなかった。
「お前らってそんなに仲良かったっけ?」
 いつもナルトはシカマルたちと一緒に昼ごはんを食べていたので、みんなはナルトがサスケに取られたような気がして気に食わない感じだった。
 特にキバはそれが思いっきり態度に出ていて、サスケに対してケンカ腰だった。
「お前って、いつもナルトとケンカしてたじゃねえかよ。何で急にそんなに仲良さそうにしてんだよ」
「別に仲良くなんかないだろ」
 サスケはナルトとの時間を邪魔されて、不機嫌そうに言い返した。
「じゃあ何で一緒に弁当なんか食べてんだよ!」
 まだしつこく聞いてくるキバに苛ついて、サスケは思ってもいないことを言ってしまった。
「オレが知るか!こいつが勝手にオレと弁当食べだしたんだよ、オレがこいつなんか誘うわけないだろ」
 言った瞬間、サスケはしまったと思ったけれど、もう遅かった。
 ナルトは一瞬傷ついた顔をすると、その場からどこかへ走っていってしまった。
 サスケもとっさにナルトを追いかけた。
「・・・やっぱ仲良いんじゃねえの?」
 シカマルが冷静に言ったけれど、今度は誰も反対しなかった。
 
 サスケは一生懸命ナルトを追いかけるけれど、意外とすばしっこいナルトに追いつくのは大変だった。
 
 くそっ・・・!
 やっとナルトといい感じに話ができたと思ったのに、オレは・・・!
 
「おい、待てよ!」
 必死に追いかけながら声をかけても、ナルトは無視して走り続けた。
 だけど、段々と上の階に上がっていったので、行き止まりは屋上だった。
「ナルト!!」
 屋上へつけば、ナルトは逃げ場を失って困っていた。
 サスケが必死の形相で追いつけば、ナルトはもっと困ってしまった。
「何でそんなに必死になって追いかけてくるんだってば。オレのことなんてほかっておけばいいじゃんか」
 サスケが何でそんなに必死なのかナルトは全く分からなかった。
「そんなことできるか!さっき言ったのは嘘なんだよ」
「・・・?」
 ナルトはわけが分からなくて首を傾げてみせた。
 その仕草を可愛いと思いながらも、サスケはぼそっと理由を言う。
「オレはお前のこと嫌いじゃない・・・」
 何とか聞き取れたナルトは、さらにわけが分からなくて質問する。
「じゃあ、何であんなこと言ったんだってばよ?」
「そ、そんなの照れくさいからに決まってんだろうが!」
 サスケが顔を赤くして言った言葉にもナルトは疎い反応をした。
「何で照れくさいんだってばよ?」
 その言葉にサスケは思わずがっくりしてしまう。
 サスケの反応にナルトは不思議に思いながらも、安心したように言った。
「でもよかった。サスケに嫌われてなくってさ」
「・・・なんでよかったんだ?オレに嫌われてなくて」
 サスケは少し期待しつつ質問してみた。
「だってオレ、なんだかんだいって結構サスケのこと好きみたいだしさ」
 ナルトはちょっと照れくさいのか、ニシシと悪戯っぽく笑ってみせた。
 当然友達としてナルトは好きだと言ったのだけど、サスケはそれでも嬉しかった。
「オレもお前のこと好きだ」
 ドサクサ紛れにかなり大胆なこと言っていたのだけど、サスケはとにかく嬉しくって気にならなかったようだ。
 そんなサスケの言葉に、ナルトは変に照れてしまった。
 
 今はそれでもいい。
 何だかずっとオレとナルトの間にお互い踏み込めない線があったのを、ぶっちぎった感じがする。
 だから今日のところはそれで満足だ。
 
「まだまだこれからだな」
 サスケは一人嬉しそうにそう言うと、ナルトの手を引っ張って教室へと帰るようにした。
「何が?」
「何でも。いつか教えてやるよ」
 
 その時までにナルトの「好き」がサスケの「好き」と同じになるように、サスケは願って。
 二人は手をつないで教室に帰っていった。
 
 
 
 
 
終わり
 
 
う〜ん。未消化じゃ。続き書くか、ナルトとサスケの学ラン姿でも描くかもしれないです。


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