シロにする
 
 
 ホワイトデーにプレゼントするものは決まった。
 ナルトにあげるということで、カップ麺にするかかなり迷ったが、やっぱり色気がないので普通にクッキーにしてみた。
 あとはナルトとバレンタインの時みたいにプレゼントを交換するだけだ。
 そして、バレンタインと同じように・・・・・・なんてことを期待する。
 ま、まあまたオレのスーパーテクで、バレンタインと同じようにナルトを頂くさ。
 
 
 ・・・なんて思っていたのに。
 
 
「・・・は?」
 目の前にはとても申し訳なさそうに手を合わせるナルトがいて。
「ホンットーにゴメンってば!」
 ずっと両手を合わせてペコペコされるから、仏にでもなった気分になる。
「どういうことだよ?ホワイトデーのプレゼントは渡せないって・・・」
「ゴメンってばよ・・・」
 ナルトはとても悲しそうな顔をして俯いている。
「しかもオレからのプレゼントも受け取れないだなんて」
 悲しいのはオレの方だってのに!
 わけが分からなくて、少し怒ったように言うと、ナルトは肩を震わせて小さい声で言った。
「サスケは知ってたハズなのに・・・何で渡そうとするんだってば」
「え・・・あ、おい!」
 どういう意味か聞く前に、ナルトは走り去ってしまった。
「・・・」
 わけが分からない。
 バレンタインのときは嬉しそうに交換し合おうって言ったのに。
 何で急に渡せないだなんて言うんだ?
 オレが何か知らないうちにナルトを怒らせるようなことをしたのか?
 いや、それにしては申し訳なさそうに謝ってたし・・・。
 でも今日は会ったときから元気がなかったよな。
 実はナルトに何かあったのか!?
「くそっ・・・!」
 ナルトに何かあってはいけないと思い、オレは慌ててナルトを追いかけていった。
 
 
 
「サスケのヤツ、ひどいってばよ・・・」
 少し離れたところで、ナルトはしょんぼりと独り言を言っていた。
 サスケが追いかけているなんて知りもしないで、団子屋でみたらしを食べている。
 しかも、ヤケ食いのようで、まだ着いたばかりだというのにもう5本目だ。
「あれ?ナルトー」
「?」
 もぐもぐと口を動かしながら道のほうを見ると、サクラといのが立っていた。
「あんたサスケくんに会いに行ったんじゃなかったの?」
「うん・・・会いに行ったけど・・・」
 切なそうに下を向くナルトに、二人は思わず抱きしめたい衝動に駆られる。
「い、行ったけどどうしたのよ?」
 何とかそこを抑えてサクラが聞く。
「サスケのヤツ、無理やりホワイトデーのプレゼントを渡そうとしたんだってば・・・」
 そりゃあそうだろうよ。
 と、二人は思ったが、それを隠していのが言う。
「え〜!?ひどいわねぇサスケくんったら。ホワイトデーの意味を知らないわけじゃないだろうにさぁ」
「ホントね!サスケくんったらナルトのことは無かったことにしたいのかもよ!」
「え〜!!!!」
 サクラがいのに次いで言うが、そのあまりの言い様にナルトはショックを受けたようだ。
「だってさぁー昨日も言ったけど、ホワイトデーの真の意味はその名のとおり「真っ白にする」ってことでしょ?シロにするって意味合いで今までのことは無しにする日だって言ったわよね」
「だからプレゼントの交換なんて言語道断だともね」
 いの、サクラにまくし立てられて、ナルトは後ずさる。
 もちろんホワイトデーにそんな意味などない。
 これは二人がでっち上げて、ナルトに吹き込んだ大ウソなのだ。
 けれど、もちろん純粋でこういったネタにも疎いナルトだから、完全に信じ込んでしまっているというわけだ。
「サスケくんって・・・。本当にナルトのこと好きなのかしら・・・?」
「怪しいわよねぇ」
 サクラ、いのにそう言われて、ナルトはまた俯いた。
「でも・・・。もしかしてサスケも知らなかったなんてことも・・・」
「ないない!毎年バレンタインにチョコもらってるサスケくんよー?知らないハズがないじゃない」
 いのの言葉が決定打で、ナルトはすくっと立ち上がった。
「じゃ、やっぱりそうだったんだ・・・」
 ナルトの声が少し震えている。
 怒っているのか泣いているのか知りたかった二人だったけれど、ナルトはそのまますぐにどこかへ行ってしまった。
「あー・・・泣いちゃったかしら」
「まぁ全てサスケくんのせいにしちゃえばいいじゃない」
 いの、サクラはそう言うと、ナルトが走って行ったほうを見る。
「まあねー。これも全てサスケくんが私たちにバレンタインのお返しをくれなかったからいけないのよね」
 二人はアタフタしているサスケを思い浮かべて、フフフと笑った。
 ・・・全く悪気がないようだ。
「ホワイトデーだから、白い日=シロにする=無かったことにするって、どっかの漫才でやってたのよね」
 いのが考えのネタを得意そうに語っていると、後ろからおどろおどろしい声が割って入ってきた。
「ほう・・・。そんなバカバカしいウソにあいつもオレもしてやられたって訳か」
「「!!!!」」
 ナルトを追いかけてきたサスケは、しっかり二人の会話を聞いてしまったようだ。
 激しい殺気を身にまとい、無駄に写輪眼状態になっていた。
 さらに左手にはチャクラをたっぷり注ぎ込んだ千鳥が。
「オレを騙したのはまだ許してやるが、ナルトを悲しませたのだけは許さねーからな!!」
 サスケは勢いよく二人に飛び掛ってきた。
「ぎゃ〜!!サスケくんっ、私たちか弱い乙女なんだけどー!!」
「どこがっ!!」
 その瞬間、大きな音がして土煙が立ち上った。
「・・・チッ!怒りのあまり手元が狂ったか・・・ん!?」
 悔しそうに言うサスケだったが、すぐに何かに気がついたようだ。
「これは・・・ナルトのにおい!あっちか」
 そう言った途端、サスケはさっさとどこかへ行ってしまった。
「・・・・・・・ふ〜〜〜〜」
「し、死ぬかと思ったわ・・・・・・」
 二人の足元には広くて深い大穴が開いていた。
「・・・お客さん」
「「はいっ!?」」
「団子5本と修理のお代頼むよ」
「「はいっ!?」」
 
 
 
 くそっ!あんなアホくさいウソに騙されるなんて!
 ナルトの奴人がいいのも大概に・・・。
「ん!?」
 森の辺りでナルトのにおいがして追っていたが、どうやらやっと見つけたようだ。
 ナルトはサスケに見つかったことも気がつかないで、しょんぼりと岩に座っていた。
「ナルト」
 声をかけると、見て分かるくらいにびくっと体を揺らした。
 恐る恐るといった感じで振り向いたナルトの顔を見て、サスケもまた驚いてしまう。
「な、何で泣いて・・・」
「サスケとは話したくないってばよ」
 ぷいっとまた別の方向を向いてしまう。
 ナルトの後姿はとても悲しそうで、時折泣いているせいで肩が揺れる。
 静かな森の中で、ナルトの鼻をすする音だけが響いていた。
「・・・オレはナルトのことが好きだ」
「!?」
 とても不振そうな目でナルトはサスケを見た。
「まずこれだけは言っておく・・・それでだ!」
 ナルトはサスケをじっと見て、一応言い分を聞くようだった。
「サクラといのが言ったのは真っ赤なウソだ!ホワイトデーにそんな意味なんかないんだよ!」
「え・・・でも」
「でもじゃない。そんな話、初めて聞いたぞ」
 そこでナルトは一気に安心したようだ。
 とりあえずホワイトデーの意味がウソでも本当でも、サスケは知らなかったことになる。
 それなら、サスケがプレゼントを渡したがったのは、純粋に自分にあげたいだけだということになる。
「あいつらはどうやらバレンタインのお返しをオレがあげなかったから、仕返しのつもりであんなことを言ったんだろう」
「そんなことはどうでもいいってば」
「な!?あいつらがお前を騙してたんだぞ!?」
 なんでそうなるんだと、サスケは苛ついてしまう。
「だって、サスケがオレのこと嫌いになったわけじゃないって分かったから、オレってばもうそれだけで他はどうでもいいんだってばよ」
 ほっとしつつ、嬉しそうな笑みで言われて、サスケは脱力してしまった。
 それと同時にナルトの言葉が嬉しくて、つい抱きしめてしまう。
 いきなりのサスケの行動に、ナルトは驚いた。
「サ、サスケ?」
「オレ、お前のことが好きで本当に幸せかもしれない」
「え?」
「ありがとな」
 そう言って、サスケはとても優しく笑うので、ナルトもこう言い返した。
「オレもサスケのこと好きで良かったってばよ」
 どちらともなしにキスをすると、またお互いに抱きしめあう。
「・・・あ、そうだ。コレ」
 サスケはずっと渡せないでいたプレゼントを取り出すと、ナルトに渡した。
「またオレってばあとからになっちゃうけど、いい?」
「ああ、構わないぜ。その前にお前を頂くことにするからな」
「!またそれだってば!?」
 呆れたように言うナルトだったが、それでもどこか嬉しそうだった。
 もしかしたら、今度はサスケの言う通りの夜になるのかもしれない。
 
 
 
 
 
 
終わり

今回は短め。もしホワイトデーにそんな意味があったらどうしましょ?
 
 
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