線香花火
 
 
「また落としたってばよ〜!!」
 日はとっぷり暮れ、カカシ家の前ではそんな時間にそぐわない子供の声が響いた。
「もうそろそろなくなるよ。もう夜中だし今日は寝ようよ」
 カカシはどこかうんざりして、そばでうつむいている子供・・・ナルトを諭した。
「駄目ー!オレってば一回もまだ落とさないで続いてないもん」
 思いっきり振り向いてそう言うと、さっそく火をつけたばかりの線香花火がまたぽとりと落ちた。
「ああー!!」
 カカシはため息をついて、今日のことを振り返った。
 
 ことの起こりはそう。
 サクラが家で花火が余ったからといって、7班でしようと提案を持ちかけてきたからだ。
 まあ俺も花火なんてここ何年もしたことがなかったので、その時はいいかなと思った。
 花火をする可愛いナルトも見れると思って、俺はナルトに浴衣を用意させてわくわくしながら集合場所へと向かった。
 だけど、ナルトは俺がせっかく渡した浴衣を着てこなかった。
「んなのどうやって着たらいいのか分かんなかったし」
「だったら俺が手取り足取り腰取り教えてあげたのに・・・!」
 そうやって言えば、サスケとサクラがすかさず攻撃なり文句なりを飛ばしてきたけれど、とにかく俺はショックだったんだ。
 しかも、ナルトは花火が初めてだったらしく、サクラにばかり教わって、あまり一緒にいられなかったんだ。
 そりゃあ俺だってあんまりやってなかったから、どの花火がどんな風になるかなんて忘れたから仕方ないんだけどさ。
 そして、やっとナルトと一緒にいられると思ったら、今度はナルトは線香花火にはまってしまった。
「ねえナルト・・・」
「しっ!今大事なところだってばよ」
 と、いった感じで、ろくに会話もできなかった。
 いじけてすねて駄々をこねたら、やっとナルトは帰ろうとしてくれたけれど、それでもまだ納得がいっていなかったらしい。
 いきなり「やっぱり一回は成功させてみるってばよ!」なんて言って、その場でまた花火をやろうとした。
 さすがにそれはどうかと思ったので、俺はとにかく自分の家の前までナルトを連れてきたんだけれど・・・。
 ナルトはやっぱり俺に見向きもしないで花火に熱中していた。
 もうすぐ花火が切れるし、近所迷惑だし、俺は寂しいしで、とにかく早く終わってほしかった。
 
「また落ちたってば〜」
 あと残り一本。
 この一本でやっと終わると思うと俺は嬉しかった。
 だけど、ナルトはとっても緊張しているようだった。
 どうせ明日にでもまた買えばできるのに、ナルトは今日どうしても成功させたいらしかった。
 これで失敗したらと思うと、ナルトがかわいそうだった。
「ナルトは落ち着きがなさすぎだからすぐ落とすんだよ」
 失敗してしまうナルトをつい想像してしまい、俺は手助けすることにした。
 線香花火を持つナルトの手を上から自分の手で持って、もう一つの手でナルトからライターを取ると火をつけた。
 後ろからナルトを抱きしめるような格好で、しばらく線香花火の様子をうかがっていたけれど、やっぱりナルトは落ち着きなく動こうとしていた。
「動いたら花火が落ちちゃうよ?」
「うっ・・・」
 すぐそばにあるナルトの耳たぶを見れば、紅しょうがみたいに真っ赤になっていて、俺は思わずいたずらしようかと思ってしまった。
 きっと耳たぶを舐めたりなんかしたら、ナルトは絶対花火を手を離して落とすだろうからなんとか押しとどめたけれど。
 可愛くって、ライターを持っている手も、ライターを地面に置いてナルトの手を握った。
「・・・!」
 ナルトの花火を持つ手が少し揺れたので、俺はそれを防ぐために少しだけ力を入れてナルトの手を握った。
「大人しくしないと、落ちるって言ったでしょ」
 俺は花火なんてちっとも見ていないのに、一丁前にそんなことを言ってみせた。
 ナルトはナルトで、よけい落ち着かないらしく花火どころではないみたいだった。
 そのせいで、気がつけば線香花火は終わっていたらしい。
「あれ?線香花火いつの間にか終わってたみたいだよ」
「えっ!?」
 見れば、線香花火の先端からゆっくりと煙が出ていた。
「ああ〜!!」
 よっぽどショックだったのか、ナルトは今日一日で一番大きな声を出した。
「ちょ、ナルト。近所迷惑だからまずは俺の家に入って。ね?」
 そう言って、勝手にナルトを自分の家に入れて黙らせる。
「どうしてくれんだってば!最後の一本だったのに、成功したのに見れなかったってばよー!!」
「いいじゃない、別に。また明日買ってやればいいだけのことだし」
 俺がそう言えば、ナルトはしゅんとするけれど、まだ諦めがつかないみたいだった。
「でも・・・」
「大体なんでせっかく成功したのに見なかったの?それに何で俺を責めるのかな〜」
 ちょっと意地悪をしてそう言ってみると、俺がわざと言ったのがばれたのか、ナルトはきっと睨みつけてきた。
「ん?何?」
 そう言いながらまたナルトに後ろから抱き付けば、ナルトはとても悔しそうに言うのだった。
「卑怯だってば!!」
「何言ってんのかよく分からないなぁ。それより明日も線香花火教えてあげるよ」
 今日は見れなかったしね?
 何てナルトの耳元で言ってやれば、ナルトはもっと顔を真っ赤にさせてしまう。
「も、もういいってばよ!」
「そう?」
 まあ、ナルトがそう言うなら俺は別にどっちでもいいんだけれど。
 
 だって、結局はナルトと一緒にいられれば俺は構わないんだから。
 
 
 
 
 
終わり

結局頑張って書いてこれ。
短けえ・・・!
 
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