嬉しい試練
 
 
「ねえナルト〜、今日は任務ないしゆっくりしようよ」
 朝からナルトはカカシをほうって一人で買い物に行こうとしていた。
 もちろんそんなことは許さないカカシは、ナルトの袖を慌てて掴むとそう言った。
「やだってば!買い物しておかないと食べるもん無くなるってばよ」
 ナルトはそう言って出かけようとするけど、やっぱりカカシに止められてしまう。
「じゃ、俺も一緒に行く」
「駄目。余分なもの勝手にかごに入れようとするから」
 あっさりナルトに断られても、カカシはねばる。
「じゃ、それしないから」
「駄目。すぐ店の中なのにべたべたひっついてくるから」
「それは無理だね」
「じゃあ家で大人しく待ってってば」
 余裕でナルトの勝利。
 けれど大人気なくカカシはなかなか引き下がらなかった。
「嫌。だってナルトのことだから、きっと誰かにナンパされちゃうに決まってるもん」
 どんな理屈だ。とか思ったけれど、ナルトは冷静に対応する。
「あのね、オレってば男だしそんなことこの里でまず言われるわけがないってばよ?」
「あいつらは好きな子をいじめちゃうガキんちょみたいなもんなんだよ。だからナルトが一人だと思うと調子こいてナンパの一つでもしてくるかもしれないでしょ」
 よっぽどカカシのほうがタチの悪そうなガキだけれど、ナルトはそもそもカカシが何を言いたいんだか分からなかった。
「カカシせんせーの言ってることがよく分かんないから、もうオレってば買い物行ってくんね」
「駄目だよ!!外には危険なエロガキや計算高いハイエナみたいなガキや、熊みたいな怪しいオッサンとかがわんさかいるんだから!大人の俺がちゃんとついていかないと危険だよ」
 サスケ、シカマル、アスマといった順で変な風に言って、ナルトに不安になってもらおうとしたけれど、無駄に終わった。
「・・・何ゆってんの?カカシせんせー」
 ・・・どころか馬鹿にされた。
 それでもめげずにカカシはナルトにへばりついた。
「だ〜め〜。絶対ついていくんだから」
 カカシの重さに耐えながらも、ドアまで頑張って歩いていったナルトだったけれど、ついに諦めた。
「じゃ、もう今日は買い物行かないってばよ」
 
 まだ一応食べるものあったし・・・。
 カカシせんせーの分は保障しないけど。
 
 ナルトの考えてることなんて知りもしないカカシは、一人で勝手に浮かれていた。
「じゃあ早く部屋に戻ろ」
 ナルトがわざとらしくため息をついても、カカシは聞いちゃいなかった。
 のろのろと戻ろうとしても、嬉しそうなカカシに腕を引っ張られて、さっさとリビングにつれていかされてしまう。
「さ、ここに座って」
 ソファに無理やりナルトを座らせると、すかさずナルトのひざに自分の頭を乗せてしまう。
「カカシせんせー、邪魔だってばよ・・・」
 いつものことらしくてナルトはうんざりして言う。
 けど、カカシはもちろんそんなことに耳を貸すわけがない。
「ナルト〜。コーヒー淹れて」
「こんな状態でどうやって淹れるんだってばよ!?」
 カカシの頭がずっしりと重くて、立ち上がることができない。
 いっそのこと頭を床に叩き潰す勢いで立ってやりたかったけれど、そうしたらコーヒーを淹れてやらなきゃいけない。
「飲みたきゃ自分で淹れろっての!」
「じゃ、いいや。ナルトの淹れるコーヒーが味の具合がよくて飲みたいだけだもん」
 今の言葉にちょっと照れたナルトだったけれど、なんだかどっちが子供なんだか分からなかった。
 照れ隠しにそのことを言ってやると、
「ひどいなぁ。ナルトだってさっきの俺の言葉に顔赤くしてたでしょ?そんなところは真似できないけどね〜」
 そうやって反撃されてしまう。
 何だかとても悔しかったのでナルトはまた反撃する。
「!!」
「嘘じゃん」
 不意打ちでカカシにキスしてみせると、カカシはよっぽど意外だったのか、真っ赤になった。
「・・・負けました・・・」
 とっても恥ずかしかったけれど、それよりもカカシを負かすことが出来たので、ナルトは満足だった。
 また勇気があったらやってみよう。と、こっそりカカシにとって嬉しいことを考えたナルトだったけれど、恥ずかしいし、不意打ちがきくので決して言わないように決めた。
 そんなことを知らないカカシは、自分はまだまだ甘いななんて思っていた。
 
 次の試練が来るのも知らずに。
 
 
 
 
 
終わり

 
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