飴のなかのりんご
 
 
「と、言うわけだから明日は朝の10時に広場に集合な」
 はーいと、明るく返事をしたのはサクラだけだった。
 もともとサスケはこういうときに何も返事はしないタイプなので、そこはおかしくない。
 問題なのはナルトだった。
「・・・・・・」
 明日は里の年に一度の夏祭り。
 人手不足のため、木の葉の下忍達が祭りの準備をし、屋台を出すことになったのだ。
 そんな楽しそうなイベントには目がないはずのナルトが、なぜか浮かない顔をしているのだ。
 サクラもサスケも何事かと驚いている。
「お前こういうの好きなくせに何でそんな顔してやがる」
 サスケの質問に、ナルトは慌てて取り繕ったような笑顔で答えた。
「別に、ただ腹が減っただけだってば!そんでオレたちはどんな出し物するって?」
「りんご飴。あれは意外と楽そうだからね、作り終わったら一人ぐらい先に帰っても全然問題ないと思うし」
 後のほうの言葉はナルトに視線を送りながらカカシは話した。
 サスケやサクラはそんなことに気がつかなかったけれど。
 ナルトはその言葉に少しだけ安心したようだった。
 
 
 
 そして次の日。
 大方祭りの準備も終えて、ナルトたちは自分達の出し物の準備に取り掛かり始めた。
「りんご飴ってきれいだってば〜」
 ナルトが不器用な手つきでりんご飴を作りながらふと口にした言葉だった。
 それにすかさず反応したのがサクラ。
「そうね。でも何でさっきからそんなにいろんな事に興味津々なのよ、りんご飴も綿菓子もお面も金魚もヨーヨーも毎年見慣れてるじゃない」
 ナルトは正直なんと答えたらいいのか返事に困ってしまった。
 実はナルトは生まれてこのかた一度も祭りに行ったことがない。
 ただでさえ街中を歩いただけで周りの人間に非難を浴びてきたナルトが、こんなめでたい日に外に出ることなど考えられなかった。
 昔、どうしても祭りに行きたくなって、こっそり参加しようとしたら里の人間に見つかって手ひどい仕打ちにあったのだ。
 それ以来どんなに行きたくても、祭りの日には絶対に家から出ないようにしていたのだ。
 だから依頼とはいえ、ナルトはとても気が進まなかった。
 
 そんなナルトをやっぱり変に思ってサクラが声をかけようとしたとき、計ったようにカカシが声をかけてきたので、ナルトはまたほっとため息をついた。
 
 こうしていくうちにも、段々里の人間が早々と祭りの会場に集まってきた。
 ナルトは無駄な抵抗だとは分かっていても、なるべく里の人間に見えないように隠れようとした。
「ナルト?あんたどうしたのよ、さっきから・・・」
 そこでまたタイミングよくカカシがやってきた。
「よ、作業ははかどってそうだな。ご褒美にこれやるよ」
 と、言ってカカシが持っていた紙袋から取り出したのは、色とりどりの浴衣だった。
「え〜!いいのカカシ先生!!」
 サクラはとても嬉しそうに浴衣を受け取ると、他の浴衣も出して、サスケとナルトの分も配ろうとした。
 が、
「って、これ女の子用じゃないの、カカシ先生・・・」
 もう一着華やかな浴衣があったのだ。
 どう考えてもサスケには似合わないし、ともなるとこの浴衣はナルトが着ることになりそうだった。
「そうなんだよね〜。買いに行ったらもうこの3着しかなくってさ、だからナルト、今日のところは悪いんだけどこれ着てくれる?」
「ええ〜!?そんなんだったら最初から着ないほうがいいってばよ!!」
 せっかく買ってきてくれて悪いとは思ったが、さすがに女の子用の浴衣は恥ずかしくって着れない。
 しかし、サスケもサクラもナルトの浴衣姿を想像すると、カカシの応援をせざるを得なかった。
「でも、せっかく買ってきてくれたんだし、着たら?」
「もったいないしな」
 うう〜っと言葉に詰まっていたナルトだが、次のカカシの言葉でなんとか納得した。
「そんなに嫌なら今日一日中女の子に化ければいいじゃない」
 それに、女の子の姿ならよっぽどの者でなければナルトだと見分けられない。
 ナルトが頷いた最も大きな理由はそこだったが。
「分かったってば・・・」
 
 
「可愛い〜!!あんた最高よ!!」
 サクラに着付けてもらい、最初に言われた言葉がそれだった。
 ナルトの変身は、いつものお色気の術の12歳バージョンで、それはそれは可愛らしかった。
「あんまり嬉しくないってばよ・・・」
「さ!サスケくんとカカシ先生に見せに行くわよっ」
 ナルトの言葉はまったく無視して、サクラはナルトを引きずるようにして二人のもとへと連れて行った。
 
「く・・・。男の姿でも十分俺はいいと思っていたが・・・、むちゃくちゃ可愛いじゃねえか!!」
 と、内なるサスケは吼えていたが、実際口に出してはいないのでナルトは知るはずもなかった。
 サスケがこっそり悶えているうちに、カカシが先手をとってしまう。
「へ〜、なかなか可愛いねえ。ま、俺としてはいつもの姿のままでも良かったんだけどね」
 などと言いながらカカシはちゃっかりとナルトの腰に手を当てていた。
 カカシのセクハラに気がつかないナルトは、カカシの言ったことが本気とも知らずにからかうなと怒っていた。
「どうでもいいから早く手伝え。もう里のやつらがだいぶ集まってきたぞ」
 サスケが二人のいちゃいちゃ(?)っぷりを見かねて、カカシからナルトを引き離すべく声をかけた。
「じゃあ、私達が作るからナルトは売ってね」
「ええ〜!?オレもりんご飴作りたいってばよ、サクラちゃ〜ん」
 ナルトの可愛いおねだりにサクラはぐらついたが、やっぱりサスケと楽しくりんご飴を作るという魅力には勝てなかった。
「だって、あんたすんごい不器用じゃないの。あんたが作ってたら売るころにはもう祭りは終わっちゃってんの!いいからカカシ先生とでも仲良くりんご飴売りなさい」
「カカシせんせーなんてどうせ手伝ってくれないってば!」
「心外だな〜、ちゃんと助けてあげるから心配いらないよ」
 と言って、カカシはまたナルトの肩に手を乗せて何気なく自分へと引き寄せてセクハラする。
 セクハラにまた気がつかないナルトは裏がありそうなカカシの言葉に素直に喜んだ。
「まじまじっ?じゃあカカシせんせーは勘定して!」
「・・・それならナルトは何するの」
「オレは飴を袋に包んで渡すからさぁ」
 サクラは楽しようとしてる!と叫ぼうと思ったが、よく考えるとナルトにお金を暗算してもらうのはとても危険なことだと思い、言うのをやめた。
 もしナルトに頼んだら、大赤字になるに決まってるものね。ということだった。
 そうこうしているうちに、祭りは段々人でにぎわってきた。
「サ〜スケく〜ん、飴ひとつちょうだい!」
 まだナルト達の店の近くは客が来ていなかったので、今のうちにといのが飴を買いに来た。
「!!あんた、もしかして・・・ナル」
 いのが言いかけたところで、カカシがすぐに遮るように話し出した。
「はい、一個100円ね〜」
 そこで大人しくお金を払い、ナルトから飴を受け取るときにまたいのは話し出した。
「あんたなんでそんな格好してるのよ?」
 ナルトは自分が好き好んでこの格好になったと思われたくなくて、慌てて訳を話した。
「カカシせんせーが浴衣みんなに買ってくれたんだけど、男物が一つしかなかったらしくて、しょうがなくこの格好して着てるんだってば」
「え?浴衣なら男物あった・・・」
「はい!毎度あり〜」
 いのが何か言いかけたときにカカシはすかさず話しに割り込んで、いのを追い出した。
 いのは訳が分からないといった感じで、大人しくその場を去っていった。
「うちの近所の浴衣屋なら男物も女物も売り切れるはずないんだけどな〜。カカシ先生ぼろいところしか見つけられなかったのかしらねー」
 勝手にそう解釈して、いのはナルトが変身していることをみんなに話そうと色々な下忍の店に回ることにした。
「あ〜あ、こりゃあ早くなんとかしないとね」
「ん?何か言った?カカシせんせー」
「いや。別に何でもないよ。ほら、もうお客さんがやってきたよ」
 思わず独り言を言ってしまったカカシだが、簡単にナルトをはぐらかすことができた。
 カカシの言ったように客がたくさん店にやってきて、すぐにカカシじゃなく、ナルトに売ってもらおうと声をかけてきたから、ナルトは慌ててそれに対応した。
「お譲ちゃん俺は一つくれ」
「オレは二つだ」
「いや〜、君可愛いねえ。君みたいな可愛い子この里にいたなんて知らなかったよ」
 里の人間は自分が可愛いと親しげに話している女の子が、いつも蔑んでいる少年だとは気がつかないでいつまでも話し続けようとしていた。
「はい、毎度。次の人どうぞ」
 カカシはそれに対してどう思っているのか、そっけない仕草で客とナルトを引き離すと、黙々と飴を売りさばいていく。
 ナルトは里の人間に親しく話しかけられ慣れていないせいか、ぎこちなかった。
 
 今のオレ、自然に笑えてるのかな。
 何かどういう風に対応したらいいのか、ちっとも分かんないってば。
 でもうまく誤魔化さないとオレだってばれたらまた何言われるか分かったもんじゃないし。
 
「お譲ちゃん名前なんていうの?」
「!!」
 
 いきなりの質問に、ナルトはいい名前が思い浮かばなくて黙ってしまう。
 
 ど、どうしよどうしよ!
 ナルトだから、ナルコっ?・・・なんかそれって変だし。
 じゃ、じゃあナルミ?あ、結構いいかも。
 でも名前に「ナル」ってついたら気が付かれちゃう?
 まじどうしよ〜!!
 
 ナルトが困っているところで、カカシがやんわりと会話に入ってきた。
「お客さん、そんなこと聞いてどうするの。この子困ってるでしょ」
 カカシの言い方は聞いているだけだったら、やわらかい言い方だったが、目やカカシを取り巻く空気は違った。
 ナルトはそんなことでカカシが殺気を放つなんて思ってもいないらしく、カカシと客だけが微妙な空気を出していた。
 カカシの眼力に負けずに客は決心したようにまた食ってかかろうとした。
「けど、名前ぐらい別に・・・」
「は〜い。次のお客さんどうぞ〜」
 が、見事に撃沈した。
 ナルトはそんなやりとりに気がつきもしないで、一生懸命飴を袋に包んでいた。
 しばらくして、ナルトの可愛さが回りに広まってきたのか、客足は減るどころか一層増えていった。
 その少し後のほうには木の葉の下忍たちがどうやって仕事をサボったのか、たくさん立って待っていた。
 
 あいつら・・・。自分達の仕事はどうしたんだよ。
 まさかこんなにも早く来るなんてね。
 早くどうにかしないと、大勢の里の人間の前で正体ばらされそうだな。
 これは早くナルトを非難させないとね。
 
 カカシはそう思うが早いが、早速行動に出ることにした。
「サスケ、サクラ〜。そっちはもう全部作り終わったんだよね?」
 材料が切れたために、もう飴が作れなくなった二人は奥で休憩をとっていた。
 サクラは暑そうにうちわで扇ぎながら返事をする。
「そうですけど〜」
「じゃあ、休憩俺達と交代ね。二人とも今度は客相手ね」
「ええ〜!?」
 さっきまでばてていたのが嘘みたいにサクラは元気よく起き上がって文句を言った。
 サスケは先を読んでいたのか、諦めたようなため息をついただけだった。
「ちょっ、サスケくんもため息なんてついてないで、文句の一つでも言いましょうよ!私達のほうが大変だったから特別に休憩させてもらったんじゃないの?カカシ先生!」
 サクラはサスケを見、カカシを見、一生懸命説得するがやはり無駄な足掻きだった。
「俺達だって大変だよ〜?時間が経つにしたがって客が増えるんだからさぁ。ま、どうせもうすぐ祭りだって終わるんだし、あと少しぐらいナルトを休ませてやりたいじゃない、ねえサスケ」
 ナルトと言う言葉にぴくっと反応すると、サスケは黙って頷いた。
 サクラもサスケもナルトのことを考えると休ませてあげたいと思った。
 ただ二人ともカカシは余分だったけれど。
「・・・しょうがないわね」
 サクラがそう言った途端、カカシはさっそくナルトの手をとると屋台から抜け出していった。
「ちょっと、カカシせんせ〜?オレってば、まだ飴入れて・・・」
 遠くのほうでナルトの声が聞こえたが、それも一瞬でサスケとサクラはカカシのあまりの手際のよさに不安でため息をついてしまった。
「おい、金髪の子はどこいったんだっ?」
 客が次々とナルトのことを聞いては押し寄せてきて、サスケもサクラも自分が店を開いているということも忘れてキレたかった。
 けれど、これは商売。
 二人は我慢して黙々と飴を売りさばいていくのだった。
 
「あれっ?ナルトはどこだ?」
 やっと先頭の列にたどり着けた下忍の集団は、キバが代表して質問してきた。
「もう飴は売り切れなんで閉店しま〜す」
 サクラはその質問をずばっと無視して、ずばっとのれんを下ろしてしまった。
 ナルトの姿を見ようとやってきた下忍の集団はもちろん納得がいかなかった。
「おい、そこに女のナルトがいるんだろっ?出せよ」
「ナ、ナルトくん・・・」
「・・・・・・・」
「ちょっと、サクラ〜?しらばっくれるんじゃないわよ〜!」
「あ〜もうめんどくせー。早くでて来いっつーの」
「もう飴ないんなら帰ろうよ」
 キバ、ヒナタ、シノ、いの、シカマル、チョウジといった順番で個性的に訴えられたが、サクラは店じまいの作業を黙々と続けていた。
「もう、絶対早く帰ってやるわ!ええ、そうよ、どうせサスケ君とお祭りでメルヘンなんて夢見るだけ無駄なのよ。そうよ、そうに決まってるわ、どうせ・・・」
 サクラは時折サスケを振り向きながらサスケに聞こえる声で不気味に呟いた。
 そんな恐ろしいサクラをさすがに無視できないと悟ったサスケは、内心びくびくしながらもサクラを誘うことにした。
「おい、時間まだあるし祭りに・・・」
「本当っ!?いいの、サスケくーん!!」
 サスケはまだ何も言い切れていなかったのだが、サクラはもうあとから言い逃れはさせないとでも言うかのようにサスケの腕をがっちりと掴むと、店じまいの作業もそこそこにさっさと祭りへと引きずって行ってしまった。
 
 やっぱり家に帰るふりしてナルトを探すべきだった・・・。
 
 と、サスケが引きずられていくときに思ったが、時すでに遅し。というわけで、サスケは祭りが終わるまでサクラに好き放題引きずりまわされることとなった。
 
 
 
 その頃うまくナルトを避難させることができたカカシはナルトに怒られていた。
「カカシせんせーってばひどい!サクラちゃんたちあんなに疲れてたのに、休憩はあれだけで、しかも接客もやらせるなんて鬼だってばよ!」
 
 そりゃ、鬼にもなるよ。
 お前がらみじゃ、ならざるを得ないし。
 ナルト以外のやつにやさしくしたって何の意味もない。
 
 カカシはそんなことを考えていたので、ナルトの言葉に無反応だった。
「カカシせんせー、さっきからオレの言葉聞いてんのっ?」
「ん?ああ、でも俺達は休憩全然取ってなかったしさ。祭りももうすぐ終わるからいいでしょ。お前だって疲れてるし」
 そこでナルトは思わず言葉に詰まってしまった。
「べ、別に疲れてなんかないってばよ!客相手にするだけで疲れるほどやわじゃないし」
 慌ててナルトはそう言って見せたが、つまりそれは言葉を返すと客相手に疲れたと言っているようなものだった。
「分かった、分かった。でも今さら戻るのもなんだしゆっくりしてこうよ」
 そう言ってカカシはナルトの手を引っ張って、強引に自分の隣に座らせた。
 
 しばらく何を話すわけでもなく、二人で静かに座っていると、一際大きな音がして花火が打ち上げられた。
「わあ・・・!」
 いつも祭りの日は、花火を打ち上げるところから遠い自分の家にいたので、こんなに近くから花火を見るのは初めてのナルトだった。
 花火が打ち上げられると、祭りがもうすぐ終わるので、いつもナルトは花火の音を聞くと安心していた。
「花火なんてこんなにしっかり見るの久しぶりかも」
「えっ?じゃあいつもどうしてたの」
 急にしゃべりだしたカカシにすぐにナルトは反応してみせた。
「中忍になってからは大体任務で祭りに出れなかったし、まあ特に一緒に行きたい人もいなかったからね」
 
 今はこうして一緒に祭りに行きたい人とこうしていられるわけだけど。
 ま、ナルトのことだから当然気がついてないよね。
 
 カカシの考えたとおり、ナルトは全然見当違いのことを考えていた。
 
 それじゃあオレといてカカシせんせー嫌じゃないのかな。
 きっと任務だから仕方なくオレと一緒にいるんだし・・・。
 任務がなければカカシせんせーは他の誰かとここに来てただろうし。
 それなら・・・
 
「来年もこの任務があればいいのにな」
 一瞬自分の考えていたことがそのまま口に出てしまったんだと勘違いして、ナルトは焦った。
「今のカカシせんせー?」
「?そうだけど」
 確認をとって安心したのもつかの間。
「何、ナルトも同じこと考えてくれたの?そりゃ、嬉しいな〜」
「ええっ?う、嬉しいって・・・」
 何で嬉しいのか心底分かってなさそうなナルトに、カカシは正直に思ったことを言うことにした。
「来年もこうしてナルトといたいって思ったのは俺だけじゃないって分かったから。それにお互いにそう思ったってことは俺達両想いってわけだ。嬉しいに決まってるじゃない」
 カカシは嬉しそうにそう言って、ナルトを抱き寄せた。
 ナルトは恥ずかしいながらも疑問を口にする。
「・・・カカシせんせーこの姿に騙されてない?」
「ひどいなぁ。人をセクハラ親父みたいに。俺はちゃんと「ナルト」が好きだよ」
 ナルトが顔を真っ赤にして俯いたときに、カカシははっとすると、いきなりナルトを抱いたまま木の上に飛び上がった。
「うわ!?何だってば・・・」
「し!」
 カカシはナルトの口をふさぐと、じっとしてるようにナルトを抱く手の力を強めた。
 しばらく経つと、数人の気配がしてきた。
「ったく、ナルトのやつどこ行ったんだ?」
「本当よ、せっかくみんなにも女の子版のナルトを見せてあげようと思ったのに〜」
「もう、帰っちゃったんだよ。おなか空いたしもう帰ろーよー」
 そんな会話が聞こえてきて、ナルトはそれが下忍たちだと分かった。
 しかも、女の子の姿の自分を見ようと、自分をわざわざ探しているのだということも分かったので、慌てて気配を消した。
 カカシはそれが分かっていたので何もいわずに下忍たちの前から自分を隠してくれたのだ。
 
 そういえば浴衣も今思えばオレが里の人間にオレだとばれないように仕組んだことだったような気がする。
 なんだかカカシせんせーってばさりげなくオレを守ってくれてるんだ。
 
「・・・なんか、カカシせんせーってりんご飴にたとえるとりんごを包んでる飴みたいだってば!」
 急にまたナルトのわけの分からないせりふについていけないながらも、カカシは理由を聞いてみる。
「何で俺が急にりんご飴の飴になっちゃうの?」
「だって、カカシせんせーってばいつもさりげなくオレを守ってくれてる気がするし。だから中のりんごを守るみたいに覆いかぶさってる飴はカカシせんせーみたいなんだってばよ!」
 カカシは大体ナルトの言いたいことが分かったが、少し訂正しておきたい部分があった。
「なるほどね。・・・でも、俺がりんご飴の飴で、ナルトがりんごなら俺は絶対溶けない飴だろうね」
「?何でだってば」
「そりゃあ、大事なりんごを誰にも食べられたくないからだよ」
 
「あ〜!もう、どこよナルト〜!」
 下でいのが叫んでいたが、そんなことには気がつかないで、ナルトは真っ赤っかだった。
 
 
 
 
終わり
 
 
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