デジャブ
 
 
 その日、オレはとっても気持ちよく寝ていた。
 夢も幸せそうな夢で、ずっと見ていたいほどだったような気がする。
 けれど、
「ナルトっナルト!」
 うきうきしたようなカカシせんせーの声が聞こえて。
「ナルトってば!」
 ゆっさゆっさと揺すられて。
「ナルトー」
 それでもオレは頑張って寝ようとしたけれど。
「ナールートー」
 あまりのうっとうしさに飛び起きてしまった。
「あーもう、夜中に叩き起こすなってば!!」
 勢いよく起き上がれば、笑顔満開のカカシせんせーがいて。
「誕生日おめでとう、ナルト!」
「・・・へっ?」
 こんなことを言われてしまったんだ。
 
 
「おはようナルト」
「・・・」
 むくりと起き上がれば、朝日が差し込んできてとても眩しかった。
「ごはんできたから食べなよ」
 カカシせんせーが珍しく朝ごはんを作ってる。
 これも昨日の夢の続きだってば?
「どうしたの?ナルト」
 オレがぼんやりしていたら、カカシせんせーがベッドまでやってきていた。
「あ、目覚めのチューがまだだったね♪」
 なんて言って、勝手にチュっとキスしてきた。
「さ!しっかり起きてごはん食べちゃって」
「・・・」
 ぼーっとしながらほっぺたをかこうとしたら、違和感を感じた。
 手を見てみると、右手の薬指に銀色に光るモノがあった。
「指輪?」
 何でこんなモノが自分の指にはまってんだろ。
 
 とりあえず椅子に座ったら、カカシせんせーはニコニコと椅子に座ってオレを待っていた。
 異様なまでの笑顔に、オレはこっそり眉をひそめた。
「ど?おいしい?」
「うん、まあ・・・」
 もぐもぐ食べているオレの右手を見て、カカシせんせーはよけいニコニコしていた。
 やっぱりこれはカカシせんせーがつけたのかな。
「ねえカカシせんせー。この指輪って・・・?」
「あ、気に入ってくれた?」
 聞いてみたら、よりニコニコ顔になった。
 やっぱりカカシせんせーがくれたんだ。
 でも何でだろ?
 実はこの指輪、発信機や盗聴器がついてるんじゃないだろうな・・・。
「やっぱり婚約指輪はシンプルでなきゃだよね」
「はァ!?」
 オレが怪しんでいるうちに、カカシせんせーは信じられないことをしゃべっていた。
「婚約って、オレたち男同士だから結婚は無理だってばよ」
「それ昨日の夜に同じこと言ってたじゃない」
「ええ?」
 オレってば昨日、そんなこと言ってたっけ?
 オレが頭の上に?マークをたくさん浮かべていると、カカシせんせーは気がついたようだ。
「何で指輪のことを聞いてきたのかと思ったけど・・・。まさか、昨日俺がナルトに指輪をあげたこと忘れたの?」
「え?」
 昨日、いつそんなことが・・・。
「確か、寝る前にカカシせんせーとジュース飲んで少ししゃべった・・・ってのは覚えてるけど」
 その後は全然記憶にない。
「しまった。ムードを良くするために酒を入れたのがまずかったか」
「え?」
 カカシせんせーが何かぼそっと言ったけれど、よく聞き取れなかった。
「あ、いや?じゃああの時俺が言ったことも忘れちゃったんだよね」
「うん?」
 何か急に慌ててるみたいだけど、何だろ?
「よし、他の奴らよりもまず一番に言わなきゃな」
「?」
「ナルト!」
「うん」
 カカシせんせーが意を決したように、オレの肩に手を置いた。
 そうして口を開いたかと思うと・・・。
 
「誕生日おめでとう、ナルト!!」
 
 ドアが派手に開いた音がしたと思ったら、大勢の声でそう言われた。
 そして、せまいドアからぞろぞろと入ってきたのは、
 イルカせんせー、サクラちゃん、シカマル、キバ、いの、ヒナタ、シノ、チョウジ、エロ仙人やサスケだった。
「・・・へ?」
 ぼんやりとみんなを見ていたら、イルカせんせーが代表して言った。
「おめでとう、ナルト!今日はみんなでお前の誕生日を祝いに来たぞ!」
「え・・・」
 隣にいるカカシせんせーが何やら悔しそうに「先に言われたー!!」なんて言っていたけれど、オレは訳が分からなかった。
「何をぼーっとしとる。今日はお前の誕生日だろうが」
 エロ仙人にそう言われて、やっとオレは今日がどういう日か理解できた。
「みんな何で俺の家に不法侵入してるわけ・・・」
 カカシせんせーが殺気立ててボソボソ言っていたけれど、またオレはそれどころじゃなかった。
「じゃ、じゃあみんな慰霊祭に行かなきゃだろ!何でこんなところにいるんだってば」
「こ、こんなところ・・・」
 ガーンとカカシせんせーが横でショックを受けていたけれど、無視した。
「オレたちだって好きでこんなところへ来たわけじゃない。ただ、今日はお前の誕生日を祝ってやるためだけに来たんだ」
「そうそう。ちゃんとみんなでケーキ作ってきたんだから。大人しく祝われなさい!」
 サスケの言葉にサクラちゃんは頷くと、そんなことを言ってきた。
 他のみんなを見ると、みんなも同じように微笑んで頷いてくれていた。
「みんな・・・ありがと!!」
 
 
 こんな光景を何度夢見たんだろう。
 何度も想像しすぎたせいか、前にもこんな経験をしたような気がしてきてしまう。
 こういうのって何ていうんだっけ?
「ナルトーこれうちの自慢の花なんだから、大切にしなさいよ」
 オレがケーキをほお張っていると、いのがプレゼントを指差してそう言ってきた。
 かと思えば、シノが珍しい虫の入った琥珀をプレゼントしてくれたり、ヒナタが改めて「おめでとう」と言ってくれたりした。
 そして、この先の展開も、何だか頭の中ですーっと浮かび上がってくる。
 この先はオレがカカシせんせーに話しかけると、確か・・・。
「カカシせんせー」
 しょげているカカシせんせーに話しかけると、カカシせんせーはゆっくりと振り返った。
「カカシせんせーはオレのこと・・・祝ってくれないの?」
 言ってから後悔した。
 もしカカシせんせーが「祝うわけないでしょ」って言ったら・・・。
「真っ先に祝ってたよ」
「え?」
 心臓がドキッとしたと同時に、またさっきの不思議な感覚が蘇った。
 次にカカシせんせーが申し訳なさそうにこう言うんだ。
「昨日、0時になると同時に、ナルトを起こしておめでとうって言ったんだよ。ナルトは覚えてないみたいだけど」
「・・・」
 そういえば、何となくカカシせんせーに起こされたような気がする。
「そのあと指輪をプレゼントして、いいムードに持っていこうと思ったから、ナルトが寝る前に酒入りジュースを飲ませてたんだけど・・・。そのせいで忘れちゃったみたいだね」
「・・・・・」
 あのジュース、どおりで変な味がすると思ったら・・・。
「ごめん!」
 まあカカシせんせーはそんなに悪気があったわけじゃないみたいだし、許してあげるか。
「しょうがないから許してあげるってば」
「ナルトォ〜」
 がばっとカカシせんせーが抱きついてきた。
「じゃああの後のことも許してくれるんだねっ」
「・・・・・あの後?」
「指輪を渡してから、ナルトは俺のものだって証拠にいろいろしちゃったからさ」
 ぽっと頬を染めて言うカカシせんせーだったが、オレは逆に青ざめた。
「いろいろ・・・?」
「あ〜んなことや、こ〜んなことや、そ〜んなことなんかも・・・」
 グフフ。と笑って言うカカシせんせーは、もはや恥じらいもクソもなかった。
「と、いう訳だから、俺が一番最初におめでとうって言ったんだよ」
 スタスタスタ。
「ってナルトォー!!」
 カカシせんせーに起こされるまで見ていた夢は、今日のことだったのかもしれない。
 けれど、こんなオチなら覚めてよかったってば!!
「ナルト〜」
 ・・・でもカカシせんせーに起こされたからまあ問題なかったけど。
「ナルトってば〜」
 ・・・でも、もとはといえば、そのあとのカカシせんせーがいけなかったわけで・・・。
「ナルトォ〜」
 それに、現実でこういう状況になったのも全てカカシせんせーが悪いんだってば。
「ナル・・・」
「あ〜もう!カカシせんせーもケーキ食べるってばよ」
 でもこれ以上怒るのも馬鹿馬鹿しい気がしたから、カカシせんせーの手を引いてあげた。
 せっかくの誕生日だし、仲良くしないと損だってば。
「ナルト!許してくれたんだね」
「なワケないってば」
 ショックを受けてうなだれるカカシせんせーに、オレは言ってやった。
「もう一回おめでとうって言ったら許してあげるってばよ」
「ナルトー!!」
 またカカシせんせーがばっと抱きついてきた。
 このあと大声で言ってくれるのかと思ったけれど、オレだけにしか聞こえないように小さく「おめでとう」と言ってくれた。
 正直、オレってばドキッとしたけれど、悔しいから絶対内緒にしてやるんだってばよ!
 
 
 
 


終わり

みなさんは既視感を感じたことはありますか?
この場合はちょっと違いますが;
というわけで(?)ナルト誕生日記念でした。


戻る