眩しい闇
 
 
 任務が終わると、すぐに家に帰る。
 いつも家に帰るときは、気が付かれないようにこっそり屋根から屋根へと移動していく。
 ゆっくり町を歩こうものなら、里の人間に何をされるか分からない。
 町を歩くのは食料を調達するくらいで十分だ。
 普段の姿とは想像もつかないほどの機敏な動きと速さで駆けていく。
 暗部の任務は週に2回しかやっていないので、今日は非番だ。
 けれど、早く家に帰って修行をしなければならない。
 今日は高度な忍術を使いたいから、周りにバレないように気を付けなきゃいけない。
 そう思って走っていたら、後ろから自分をつけている気配が感じられた。
「またか・・・」
 とても小さくそう言うと、普段の明るい姿とは似ても似つかないほど冷たい顔をして、ナルトは森へ駆けていった。
 すぐに森の奥へつくと、足を止める。
「で?今日は何の用だ」
 上を向いてナルトは言うが、その先には誰もいない。
「今日の任務は手を抜きすぎだったろ」
 と、思ったらナルトの真後ろに静かに立っている人物がいた。
「オレが本気になって任務をしたら、一瞬で終わるじゃねえか」
 ナルトはそちらを見もせずに得意そうに言ってやる。
 その途端、後ろから不機嫌そうな気配が伝わってくる。
「・・・さすがに狐なだけあって人を騙すのが好きなようだね?それともただ単にサスケとサクラを馬鹿にしてんの?」
「両方。あ、あとお前もな」
 本当はどっちもウソだ。
 オレが火影になるためにはいい顔をして周りを油断させて、ゆっくりと自分の強さを出していかなければならない。
 こいつ・・・カカシをバカにしているのは本当だが。
「犯すよ?」
 案の定、カカシのヤツはキレたようで、いきなりオレを押し倒してきた。
 だけど、大して驚きもせずに言い返す。
「オレのことがムカつくんなら、殴るとか蹴るとか殺すとかすればいいのに、何でいつもそうなるんだかな」
「うるさいよ」
 カカシの目はどこか苦しそうで、少し血走っているのに潤んでいた。
 ・・・気持ち悪いな。
「あー。オレ、仙人と約束があったような気がする」
 本当はそんなものなかったけれど、ナルトはそう言うと簡単にカカシの腕から逃げた。
「行かせないよ」
 カカシは「また?」と内心思っていたけれど、代わりにそう口にした。
「お前には関係ないだろ?」
 それはそれは愉快そうに笑うと、ナルトはその場から走り去ろうとした。
 けれど、カカシに腕を掴まれてしまう。
 ちっ・・・と舌打ちをしてカカシを見たナルトは、ため息をついてしまう。
 今度は泣き落としかよ?
「関係あるよ」
 今度は急にしおらしくなるカカシにげんなりする。
「どこらへんが?」
 体の中身のどこかが心底冷めたような感じがしながら、オレは一応聞いてやる。
「俺の気持ちを知っててそんなこと言うわけ?」
 だから、そんな目でオレを見るなよ。
 鳥肌を立てて少し考える。
 こいつはオレのことを憎んでいると言いながら、オレのことを好きだとも言う。
 さっきのように「狐」とか言ってオレのことを罵っていたくせに、急に気持ち悪い目でボーっとオレを見てきたりするから不思議だ。
 何を考えて、何をしたいのか全く分からない。
 どっちが本当で、どっちもウソなのかさえもオレには分からない。
 オレのことを憎んでいるのなら、好きだというのは単にからかってバカにしたいだけなのだろうし。
 オレのことが好きだというのなら、憎んでいるフリをして興味を引かせたいのかもしれない。
 どっちも違うなら、ただの暇つぶしということになるけど・・・。
 何にしろ、オレにとっては迷惑だ。
「ナルト・・・」
 はっとして気がつけば、口布を下ろしたカカシがオレの顔に自分の顔を近づけていた。
 すかさず避けると、カカシは心底傷ついた顔をする。
「ずっと前から聞きたかったんだけどさ」
「・・・何?」
 カカシは一先ずはナルトの言うことを聞くことにしたようだった。
 その隙にカカシから少し離れて危険を避ける。
 カカシがそこで傷ついた顔をしたけれど、あえて無視をして話を進める。
「お前、本当はオレのこと何て思ってんの?好きか嫌いか興味ないか。ウソをついたら・・・分かってるよな?」
 自分とカカシはそこまで力の差はない。
 ・・・が、どちらにしろ無傷ではお互いいられないだろうから、脅すように言う。
 カカシはため息をついた。
 ナルトに脅されたからというわけではなく、さっきまでナルトを罵っていたときとは別人のような顔で言った。
「好きだよ。好きすぎてどうしたらいいのか分からなくなるくらいに。じっと見守るだけじゃ足りない。好きだといい続けるだけじゃ足りない。かと言ってお前を傷つけてみても足りないくらいにね・・・」
 好きすぎて憎たらしい。
 サスケやサクラと話しているだけでも、同じ空気を吸っているだけでも許せない。
 他のヤツのことを見てるナルトが憎たらしい。
 俺のことを見ないナルトが憎たらしい。
 だけど、好きなんだ。
「・・・何でオレなんだよ?」
「さあ?初めてお前を見たときから何故だか心臓がうるさかったよ。偶然お前の正体を知って、もっと心臓はうるさくなった。そこでやっと自分がナルトのことを好きだということが分かったんだ。理由は分からないよ」
 恋ってそういうものだろ?
 カカシは目だけでナルトに問いかけるが、ナルトはカカシの言っていることはよく分からなかった。
「オレは生まれて一度もそんな気持ちになったことがないからよく分かんねーよ」
 ただ、読んだ小説や、テレビのドラマなんかだと登場人物が同じような状態になっていたような気がする。
 最近読んだ小説なんかは、愛しいあまりに想い人を殺してしまう話なんてものもあった。
 そう思った途端、ナルトは寒気がしてきた。
 好きすぎて殺すだなんておかしい。間違ってる。
 好きってものはそういうものなんだろうか。
 だとしたら、理解もしたくないと思う。
「・・・気持ち悪いな・・・」
「え?」
 とても小さな声で言ったので、カカシは聞き取れなかったみたいだ。
 けれど、もう一度言い直してやる気もなかったので、オレはカカシの隙をついて走り去った。
 狂ったようなその想いに、オレは正直怖くなったんだ。
 だから怖さゆえなのか、好きという感情が何かやっぱり知りたくて、オレはある場所に向かった。
 
 
「メシ食わしてくんない?」
 今日はメシを作る気分じゃなかったので、仙人のところへ行ってみた。
 仙人は小説を書いていたようで、今オレが来たことに気がついたみたいだ。
「珍しいの。お前からウチに来るなんて。・・・なんかあったのか?」
 こういうとき、オレの正体を知ってるのが仙人でよかったと思う。
 カカシは最悪だけど。
 仙人はオレの顔を見ただけで、オレが何を考えてるのかすぐに分かるんだからすごい。
「好きって何だ?」
 唐突に聞いてみれば、やっぱり仙人はズッコケた。
「何だ?とか聞かれても・・・。っつーか、何で急にそんなこと聞いてくるんだっての」
「・・・カカシのヤツが・・・」
 あまり言いたくないので口ごもっていると、仙人はすぐに理解したようだ。
「ほ〜ん」
 けれど、顔はニヤついていてどこか嬉しそうだ。
「あのガキやっと言ったのか。全くじれったいヤツだのー」
「へ?」
「カカシがお前に好きだとでも言ったんだろ?ワシくらいの年になれば、そんなもの軽く分かるんだっての」
「・・・・・」
 得意そうに言われて、何となくムッとしたけれど、当たっているからしょうがない。
「ワシもお前のことは気に入っとるが、あいつのはもっと別物なんだろ」
 そうだ。あいつのはもっと鬱陶しい感じで厄介そうだった。
「まぁ、昔っからそういう感情に慣れてないお前にはあいつの想いは少しキツイかもしれんな」
「?」
「・・・あいつは普通の恋愛感情よりももっと強くお前のことが好きなんだ。きっとお前がどれだけ拒絶しても諦めはしないさ」
「ウソだろ・・・」
 死ぬまでカカシに言い寄られるのを想像して、オレは眩暈を起こした。
「別に大したことないだろ。言わせておけば」
「・・・もういいよ、じゃあな」
 何となく面倒くさくなってきて、オレは仙人の家から出ようとした。
「メシはいいのか?」
「もーいいって。じゃ」
「おう」
 しばらく何も考えないようにして家に向かう。
 が、あることに気がついた。
「好きの意味をしっかり聞いてなかったか」
 そう思ったけれど、カカシのは普通よりも厄介らしいから、あまり意味を聞いてもしょうがないかとも思った。
 色々と疲れていたので、今日はもうまっすぐ家に帰ることにした。
 
 
 
 次の日に任務があったので、オレは休憩中にカカシを呼び出してこう言った。
「オレはお前のこと好きじゃないから必要以上に関わるなよ」
「えっ・・・」
 カカシはその時、この世が終わるような顔をしていた。
 これだけショックを受けたんだから、もう諦めてオレに話しかけても来ないと思ったんだ。
 ところがまた次の日。
「ナルト」
 そのまた次の日。
「ナルト」
 次の日と・・・。
「ナルト」
「うざい。消えろ」
 関わるなと言って釘を刺しておいたのに、四六時中今まで以上に関わろうとする。
 やっとオレがそう言い返すと、ショックを受けているものだと思っていたのにとても嬉しそうに微笑んだりするから始末に負えない。
「やっと返事してくれたね」
「今のは返事じゃないだろ。・・・前にオレが言ったこと聞いてなかったのか?」
 凄みをつけて言ってやる。
「聞いたけど、守る義務はないよ。今以上に嫌われることがないんならなおさらね」
 けれど、カカシはあっけらかんと開き直ったように言ってみせた。
「嫌いになら無限になれるような気が今したぞ」
「それでもいいよ。こうして一緒に居ることができて話をして、俺のことをナルトが見てくれるのなら」
 真っ直ぐすぎるその言葉に、どうしてだか胸が苦しくなる。
 よく分からないけれど、自分がカカシに劣っているような気もしてムカムカしてくる。
「好きだよ、ナルト」
 純粋な言葉を言われるたびに、自分の心はより汚れていくような気がした。
 そんなどす黒い何かを吐き出すように、ナルトはこう口にした。
「・・・じゃあオレのためなら何でもできるよな?」
「うん」
 嬉しそうに笑うカカシを見ながら、どこか嫌な笑みで言ってやる。
「じゃあ死ねよ。それが駄目ならこれから一生オレの前に姿を現すな」
 傷つけ。
 傷ついて、さっさと自分のことなんか嫌いになればいい。
「・・・それはできないよ」
 カカシは一瞬傷ついた顔をしたが、また微笑む。
「俺はナルトのことが好きだから、ナルトと一緒にいたいもの。それだけは無理だよ」
 ギリ、と拳を握る。
 また負けたような気分になる。
 何故なんだ?
「・・・」
 ムカついてきたオレは、任務中だったけれど家に帰ろうとした。
「まだ任務あるよ?」
 焦ったように言うカカシに、オレは振り向きもしないで言い返した。
「お前といるのが嫌だから、今日のところはもう帰る」
「ナルト・・・!」
 カカシの切羽詰ったような声が聞こえたときには、オレはもうすでに遠く高く飛んでいた。
 任務をサボるなんてオレだって好きじゃないが、それよりも今はカカシから逃げたかった。
 あいつは担当教員だから、当然任務はあるし追って来れないだろう。
 そう思うと安心したのか、走るのをやめて歩いて家に帰ることにした。
 すぐに町の中に足を踏み入れると、嫌な気配が感じられる。
 うっかり町の屋根を渡るのを忘れていた。
 けれど、もう遅いようだ。町を歩いていた人々が嫌な目をしてオレを見ていた。
 そういえば、最近特に自分に向けられる殺気が強くなったような気がする。
 そう思っていると、殺気と共にある物が自分に向かって飛んできた。
「・・・」
 横目でこっそり何か見ると、卵だった。
 しかもその軌道を読むと、間違いなく自分の頭に直撃する。
 嫌だな・・・あれ絶対生卵だし。
 かと言って避けたら怪しまれるし。
 ・・・よし、あれでいこう。
「うわ!」
 ナルトは何もないところでつまづいたフリをして、生卵を避けてみせた。
 生卵はすぐそばにあった肉屋の床にべちゃっと嫌な音を立てて落ちていった。
「いてて・・・」
 ドジなフリをして、足についた砂を落としていると、卵を投げたらしい本人が目の前にやってきた。
「フン・・・。ドジなくせに運がいいのね」
 言い方はサクラに似ているのに、この人間はとても冷たく、ナルトを見下すように言った。
「?誰だってばよ」
 首を傾げて尋ねると、悪意のこもった目で睨みつけられる。
「あんたさ、どういう手を使ったのか知らないけど、私のカカシをたぶらかさないでくれる!?」
「はぁ?」
 今のは素で言ってしまった。
 まずい、怪しまれたか?
 けれど、そんな心配はいらなかったみたいだ。
「とぼけないで!!カカシ、私に言ったのよ「好きな人ができたから、お前とはもう会わない」って!誰って聞いたらあなたなんかの名前を口にするのよ!?そんなこと有り得ないわ!」
 オレもそう思いたいよ。
 目の前の女は今はこんなにも怒りや妬みで顔を歪めているけれど、きっと笑ったりしたら美人なんだろう。
 それなのに、本当になんで「オレ」になるんだろう?
「オレはそんなこと分からないってば・・・」
「どうせ、狐がうまく化かしたんでしょ!?男のクセにカカシをたぶらかすなんて、狂ってるわ!」
 そんな勝手な言い分に、オレは何だか我慢ができなくなってしまう。
「・・・ただ、カカシせんせーがお姉さんのことフッたのは分かる気がするってば。そんな歪んだ性格してりゃ、誰も寄り付かないってばよ?」
「・・・!!」
 言った途端、蹴られた。
 鍛えてるとはいえ、やっぱり無防備な状態で蹴られ続けているのは辛い。
 それでも何だか心の中は清々していた。
 里の人間は近くにいても、ただ冷たい目で見ているだけだった。
「おい!この床は誰の仕業だ」
 この騒ぎを聞いて、肉屋の店長らしき人物はやっと床の卵に気がついたようだ。
 オレを蹴りまくっていた女は、その途端とても嫌な笑い方をした。
 この先の展開が読めて、オレはため息が出た。
 女はオレの首根っこを乱暴に掴むと、卵の落ちている床まで引きずっていった。
「コレの仕業です。今から拭きますね?」
 そうどこか嬉しそうに言うと、オレの頭を掴んで、卵が潰れているところにオレの顔面を押し付けた。
 卵は卵白の部分が痒くて、床はあまり磨いてないのか汚かった。顔が汚れるし、痒い。
「ぐっ・・・」
 思わず声を漏らすと、周りでそれを見ていた里の人間たちは笑っていた。
 女も、肉屋も笑っていた。
 カカシが女にそんなことを言わなければ良かったのに。
 カカシがオレのことを好きにならなければ良かったのに。
 オレとカカシが会わなければ良かったのに。
 そもそもオレの腹に九尾がいなければ良かったのに。
 元を辿っていけばキリがない。
 けれど、そう思わずにはいられない。
「―ナルト!!」
 そう、声がしたと思ったら、オレを押さえていた女の圧力がなくなっていた。
「カ、カシ」
 顔を上げれば、目の前にはいるはずのないカカシがいた。
 女はカカシに殴り飛ばされたのか、かなり離れたところでわき腹の辺を押さえながら呆然としていた。
「何、やってるの?」
 カカシの声は今までに聞いたこともないくらいに冷えて、鋭かった。
 その瞬間、里の人間も肉屋もそそくさとその場から消えてしまう。
「な・・・にって、こいつがカカシをたぶらかしてるから、私が説教をしてあげて・・・」
 ガタガタ震えながらも、誤魔化そうとしない女は強いのか馬鹿なのか。
「俺お前に言ったよね?」
「だけど・・・」
「ナルトとお前なんて比べものにもならないの。・・・今度ナルトに何かしたら殺すよ?」
 女はひぃっと小さく悲鳴をあげて、すぐに逃げてしまった。
「・・・お前があの女にオレのことを言わなければ、こんなことにはならなかった」
「ごめん・・・」
「謝るんなら、オレの前からいなくなれ」
「それは無理」
 言うと思った。
 思わずため息をつくと、カカシは変に勘違いしたようだ。
「ナルトにつっかかってくるヤツは俺がすぐにみんな殺すから許して?」
 必死でそんなことを言うカカシが愚かだった。
「・・・そんなことをしたら木の葉の里は潰れるぞ」
「じゃあ二人で逃げようか?」
「バカだろお前」
「だから、嫌なヤツは全部殺した方がいいよ」
「何でもかんでも殺す殺す言うなよ。そんな簡単なモノじゃないだろ」
 どう言ってもナルトは言い返してきて、カカシは必死だった。
 そして、ナルトの顔に卵がついたままだということにやっと気がついた。
 慌ててハンカチを取り出すと、丁寧に卵を拭いてやる。
「ごめんね・・・」
「謝るくらいなら、オレの前から消えろってのに」
「それはできないよ」
 ナルトの顔についた卵は綺麗に拭い去ることができた。
「だからさ・・・ずっとこうして守らせてほしいな」
 カカシは少し照れくさそうに笑うと、卵がついたままのハンカチをまたポケットにしまおうとした。
 ナルトはそれを手で止めると、カカシの手からハンカチを取る。
「いいよ」
 そうして自分の左手に持ち直すとこう言った。
「これはオレが洗っとく。乾いたら明日返しに行くから」
 それだけ言って、ナルトはカカシの顔も見ないで走り去っていった。
 
「いいよ」
 
 そのニュアンスは、カカシの返事にOKしたようにも聞き取れる。
 ハンカチのことのようにも聞き取れる。
 どちらかは分からないけれど、カカシは自分に都合のいいようにとらえることにした。
 間違っていたにしろ、いつかはその意味が自分の信じるものになるかもしれないから。
 愚かだと思うけれど、好きなんだからしょうがない。
「明日乾いているといいな・・・」
 そうしたら、すぐにでもどっちの意味だったのか聞いてみよう。
 
 きっと任務を無理やり切り上げでもしたんだろう。
 無茶をする。
 それに、オレは心も体も強いんだから、守ってもらう必要なんてないんだ。
 手に持ったハンカチをぎゅっと握る。
 家に帰ってすぐに洗って干さなきゃいけない。
 ・・・別に急ぐ必要はないかとそこで気がつく。
 だけれど、何故か走るスピードは緩むこともなく家へと急ぐ。
 今でもカカシのことは鬱陶しいし、目障りだ。
 なのに、イライラする気持ちと一緒に、どこか暖かい気持ちになるのは何故だろう。
「乾かなくても会いにいくか」
 無駄に喜ばせるかもしれないけれど、それでもまあいい。
 
 あいつがとても嬉しそうに笑う顔が頭の中に浮かんだ。
 もしかしたら、明日にでもこの暖かさの秘密を知ることができるかもしれない。
 
 ナルトは、そのまま明日に飛び込むかのように、強く強く地面を蹴った。
 
 
 
 
 
終わり
 

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