11月12
 
 
 今日はどうやらわしの誕生日らしい・・・。
 なぜそんなことを思うのかって、ナルトが今日一日中そわそわしてるから。
 こいつはわしにバレてないつもりなのか、こっそりケーキの作り方の本を読んだりしてる。
 ・・・バレバレだっつーの。
 まあそういうところが可愛くもあるから、結局わしはナルトに何も言わずにいつもと変わらない風に装うしかない。
 たまにわしの様子をチラチラとうかがう気配がするが。
 バレてるんだと言ってしまいたかったけれど、そうしたらこんなナルトは見れないと思うと、わしは何も言おうとはしなかった。
 ・・・本当にこんな子どもに惚れてるなんての〜。
 
 
 
「仙人ってば最近欲しいモノってないってば?」
 そんなこと言ってしまえば、いくらなんでも自分が誕生日だと気が付かれてもおかしくないと思うんだが。
 それでもナルトがわくわくしながらわしの返事を待つからまだ騙されてやることにする。
「もうそんな歳じゃねーからの〜。言ったところでお前がくれるワケもねーしの」
「!そんなの分かんないってば!オレだって忍者やってんだから蓄えぐらいあるってばよ」
 ムキになって言うところがまた笑える。
 だからわしは少しだけ悪戯してみようと思った。
「ほ〜。じゃあわしが言ったものは必ずくれるんだな?」
「もちろんだってばよ!!」
「男に二言はないぞ」
「おうっ!!」
 威勢のいいナルトの返事を得て、わしはいよいよニヤっと笑った。
 そこでナルトはやっと嫌な予感がしたのか、顔が引きつった。
 だが、当然もう遅い。
「・・・じゃ、今晩はお前をたっぷりイタダくかの〜」
 言ったとたん、ナルトはわしの予想通りの反応を見せた。
「それってばサギだってばよ!!」
「うっさいのー。男に二言はないと言っただろうが」
 そこでナルトはさっきよりも顔を真っ赤にして、少し大人しくなった。
「だ、だって、でも・・・。それはそれだってばよ・・・?」
「いいや、違う!そんなしおらしくしてみせたってわしは騙されんのからの!」
「チッ!」
 いきなりしおらしかったナルトが舌打ちをして、わしの睨んだとおり安い芝居だったことが分かった。
 危うくまんまと騙されるところだった。
 大体「ナルトをいただく」にしたって、もうとっくの昔にいただき尽くしとるじゃないか。
 何で今さら出し惜しみするのかが分からん。
「仙人ってばいざそうやって宣言すると無茶しそうで嫌なんだってば」
 わしの思ってることが読み取れたというのか、いいタイミングでナルトがそう言った。
「この前だってオレが気絶するほどして、さらにオレが気絶してんのにまだヤッてたなんて・・・。もうゼッッッタイ嫌だってばよ!!」
「何を言う。あの時お前もノリノリだっただろーに。しかも最後にはまたちゃんと起きとったじゃないか」
「疲れてんのに仙人が起こしたんだってば!」
「最後は、もっと・・・とか言っとったくせに・・・」
 ぼそっと決めのセリフを言えば、ナルトの血管のブチ切れる音が響いた。
「・・・。っも〜!!仙人なんか知らないってば!」
 どでかい声で叫んだと思えば、ナルトはこれまたどでかい音をたててドアを開けて家から出て行ってしまった。
 
 
 
 っもー!!仙人なんか独りで誕生日を過ごせばいいんだってば!
 いつもいつもオレが結局仙人の言うこととか聞いてやってんのにー!
 それを感謝しないでイヤなことばっかり言って!
 今日は仙人の誕生日だけど、オレの普段からのありがたさを知るべきだってばよっ。
 今日一日めいっぱい反省して寂しがらせばいいんだってば。
 ・・・けど寂しく思うのかな。
 仙人ってばいつもそっけない感じだから、別に独りの誕生日でもオレがいなくてもどうも思わないんじゃ・・・?
 そうやって考えると、いつもオレから仙人に寄りかかってた気がする。
 仙人からオレに・・・ってのはエッチだけだった気がする・・・。
 って、体だけが目当てだったってば!?
「もー!絶対知らないってばよ!!」
 本当はそうじゃないと思いたいし、信じたいけれど、怒りバクハツのオレってば今はそうやって言ってしまいたかった。
 ・・・けれどそれがよかったのか、悪かったのか。
「どうした、そんなにイラついて」
 聞きなれた声がしたと思って振り向けば、そこには綱手のバアちゃんが立っていた。
「バアちゃん!」
 つい甘えてしまって抱きつくと、綱手のバアちゃんはオレを優しく抱き返してくれた。
「また自来也とケンカでもしたのか?」
 オレの頭も優しく撫でてくれて、オレは嬉しくってもう少しだけぎゅっと力を入れて抱きついた。
「どうせまたあいつが変なことでもやらかしたんだろう」
「仙人ってば、せっかく今日は仙人の誕生日なんだから何でもプレゼントしようと思ったのにさ・・・」
 これだけで大体仙人がそのあとオレに何を言ったのかが、綱手のバアちゃんには分かったみたいだった。
「まったくあいつは・・・。好きな子いじめなんてガキくさいこと、あの年でまだやってるとはね」
「よし!いいこと思いついたよ。ナルト、あんた今日は私の家に泊まりな」
 独り言を言っていたと思えば、綱手のバアちゃんは急にアイデアを思いついたらしく、そんなことを言ってきた。
「えっ!?何で・・・」
 そんなことをしたら仙人は・・・?
「何でって、あいつにお仕置きしてやるのさ」
 とても嬉しそうに言う綱手のバアちゃんは、見た目と同じくらいに生き生きしていて若く見えた。
「誕生日を一人で過ごす寂しさをよく思い知らせてやればいいのさ」
 とても自信満々でどこか嬉しそうに言う綱手のバアちゃんだったけれど、オレは逆に不安だった。
 でも、そんなこと言ってしまえば綱手のバアちゃんを心配させるだけだと思って、オレは黙っていた。
「いつもナルトがそばにいるのが当たり前だと思ってるから、たまには反省させればいいのさ」
 バアちゃんはそう言うと、オレの手を引いて家に向かった。
 久しぶりに綱手のバアちゃんと一緒に泊まれるのは嬉しかったけれど、どうしても仙人のことが気になってしょうがなかった。
 
 
 
「ったくナルトのやつはどこをほっつき歩いとるんだか・・・」
 もう晩飯の時間はとっくにすぎたというのに、ナルトはまだ帰ってこない。
 わしに対して怒っていても、今まで家に帰らないなんてことはなかった。
 だからどうせ今日だって晩飯前には腹を空かせながら、それでもふくれっ面をして帰ってくると思った。
 なのにいつまで経っても帰ってこない。
 わしの誕生日に限ってそんなことはないと思いたい。
 
 ナルトが帰ってくるまでは飯に手をつけないようにしていたが、もう完全に冷めてしまった。
 わしの腹の限界もとうに超えて、今ではかえって腹が空腹だと感じることもない。
 飯だって本当はいつもナルトが作っていたのに、何で今日に限って帰ってこんのだ。
 じっとドアを見ていても、ナルトの気配がしないうちは来るはずがないってのに。
 わしのあの冗談がそんなに嫌だったってのか?
 いつも似たようなこと言ってるんだから普通あそこまで怒るかっての。
 ・・・って、今日はわしの誕生日だから真剣に言って欲しかったのかもしれんが。
 しかし、本当に欲しい物なんてないんだからどーしようもねーっての。
 
 じぃっとドアを睨みながらそんなことをつらつらと考えていたが、いつまで経ってもナルトが帰ってくる気配もない。
「いい加減に帰ってこないともう夜中になるぞ」
 それでいてももう夜の11時だというのに。
 誰かの家にいるんならまだ安心だが、外をほっつき歩いていたら危険だ。
 いや、カカシやサスケなどの家に泊まられてもそれはそれでかなり危険なんだが・・・。
 
 どっちみちナルトが危ないと思い、わしはとりあえず家を出ることにした。
 
 
 
 もうそろそろ夜中になる。
 仙人は本当に今日中にオレのところへ来てくれるのかなぁ。
 もう11時なのに、全然来る気配がないけど・・・。
「来た!」
 と、思っていたら、いきなり綱手のバアちゃんがどこか嬉しそうに言ってきた。
「えっ?どこどこっ?」
 身を乗り出して窓を覗けば、仙人が遠くから歩いてくるのが見えた。
 怒っていたのも忘れて、顔が緩んでしまった。
 そんなオレを見ちゃったのか、綱手のバアちゃんはオレの頭を撫でてまた嬉しそうに言った。
「ほら、たっぷりあいつを叱っておけ」
「わ、分かってるってばよ!」
 綱手のバアちゃんがやけににやけていたのが気まずくて、オレはぶっきらぼうに言うと玄関に走っていった。
 ドアを開けるところでちょうどドアホンが鳴った。
 勢いよく出ると、仙人がぶすっとした顔をして立っていた。
「!いきなり開くからびっくりしたぞ」
「・・・何の用でここに来たんだってば?」
 オレは怒ってるぞ!と少しでも伝わるようにむすっとした顔でそう言った。
 でも仙人はオレが本当は寂しがっていたのが分かってしまったのか、生意気なことを言った。
「お前が寂しがってるかと思って迎えに来てやったぞ」
「ぜんっぜんそんなことないってばよ!オレってば今日は綱手のバアちゃんのところに泊まるつもりだし、よけいなお世話だってばよ」
 そう言って、オレは力を入れてドアを閉めた。
 しめた途端、オレたちの会話を聞いていたのか、綱手のバアちゃんが立っていた。
「ナルト、それはいくらなんでもあいつを懲らしめすぎじゃ・・・?」
「そんなつもりじゃないってば!本当にムカついたから正直に思ってることを言ったまでだってばよ!」
 オレがそう言えば、バアちゃんはあきれたようにため息をついた。
「そんなに泣きそうな顔してるくせに・・・」
「泣きそうな顔なんかしてないってば!」
 怒りのままに、オレは元いたリビングに戻った。
「ナルト」
 すると、どういうわけか仙人が目の前にいた。
「な、不法侵入だってば仙人」
「いいから帰るぞ」
 仙人はオレがどれだけ怒ってるのか知りもしないでオレの手をぐいぐい引っ張った。
「嫌だってばよ!仙人みたいな人でなし、知らないってば」
 何がなんでも仙人から離れてやろうともがくけれど、全然適わない。
 それどころか仙人はオレをぎゅっと抱きしめてきた。
 
 ・・・っそんなことされちゃ、逃げる気が失せるってばよ。
「言っとくが、わしの欲しいものはいつも同じだしいつもお前にもらっとるからああ言ったんだぞ」
「へっ?」
 よく意味が分からないってば。
「だから、わしは物なんていらないんだよ。お前さえいればそれで」
 仙人はそこで恥ずかしくなったのか、オレから顔を逸らした。
 こんな仙人なんか見たことなくて、オレは驚いた。
 じっと仙人を見ていたのか、赤い顔をした仙人がまた言った。
「そんなにじっと見ることもないだろ。っつーわけだから帰るぞ、ナルト」
「うん!」
 こんなに簡単に許しちゃうのも甘いかと思ったけれど、こんな仙人を見れただけでもう満足だってば。
「私はなんだったのかね・・・」
 綱手のバアちゃんの家を出るときに、バアちゃんのそんな呟きが聞こえたような気がしたけれど、すぐに仙人に抱きかかえられて家を出たのでよく分からなかった。
 また今度今日のお礼をしなきゃ。
 
「で、仙人は結局欲しいものはないってことでいいんだよな?」
 仙人の家について、オレはさっそく確認をしてみた。
「いいや、そんなことは言っとらんだろう。もちろんたっぷりナルトをイタダくつもりで・・・」
 仙人が嬉しそうに言ったけれど、オレは反撃に出てやった。
「オレもせっかく仙人の誕生日だから叶えてやりたいと思うけど、残念だったってば」
 そうして指をあるものに指してやった。
「ま、まさか・・・」
 指を指したもの・・・時計を見て、仙人の顔が今度は青ざめた。
「うん。残念だけどもう12日になったから仙人の誕生日プレゼントは来年に持越しだってばよ」
「そ、そんな〜!!」
 仙人はよっぽどショックだったのか、しばらくオレにへばりついたり一人でぼそぼそ言っていた。
「じゃ、じゃあ来年はすっごいプレゼントをもらうから覚悟しとけよ、ナルト・・・!」
 何か燃えるような目で仙人は言ってきた。
 そうしてさっそくオレを押し倒すんだから、どうせすっごいのやるつもりなんだってば。
 でも、今日はオレのほうがプレゼントもらったような気がするからいいってば。
 って、昨日のことだったってば。
 今日11月12日は一日遅いけど、仙人にオレからプレゼントするってば。
 
 ・・・しかと受け取れってばよ!
「!・・・ナルトからキスしてくるなんて珍しいのー?」
「うん。今年の誕生日プレゼントだってばよ♪」
「・・・・・・」
 
 
 
 
 
終わり

久しぶりに小説書いたような気がします。
そのせいか長くなってしまいました;
自来也の誕生日に間に合わなくてすみませんでした。
 
 
 
 
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