勝利論
 
 
 今日も自来也は盛大にため息を吐いた。
「せんにーん!今日も修行だってば」
 朝起きると、一緒に暮らし始めたナルトが毎回甲斐甲斐しくもご飯を用意してくれている。
 朝食を作っているエプロン姿はそれはそれは可愛らしくて、自来也はいつもナルトを見る瞬間だけ和む。
 そのあとすぐにナルトは「修行!」と言うので、自来也はいつもそれでため息をついてしまうのだが。
「・・・毎回言うようだが、もうちっと色気なんてもんはないのかのぉ・・・」
「そんなもんは女の人に言えってば!さ、早く飯食って修行だってばよ」
 ナルトはそう言うと、自来也に無理やりご飯を食べさせる勢いで料理を運んできた。
 昨日はあれだけ宜しくやったというのに、ナルトは若いせいなのか、九尾の回復力のせいなのかぴんぴんしていた。
「少しは年寄りを労われってーの・・・」
 と、言いつつ昨日はナルトが「もう嫌だ」と言っているのに、何だかんだと言ってたくさん抱いたのは自来也だったけれど。
「ん?何か言った?」
 そう言って、くるっと振り返るナルトが可愛らしくて、自来也は手招きをした。
 そのままナルトはしたがって自来也のところまで行くと、すぐに抱き上げられる。
「やっぱり修行よりかこっちの修行のほうが断然いいぞ」
 そう言って、さっそくナルトの服をめくって肌に触れる。
「よ、良くないってば!その修行は昨日散々やったくせに・・・。今日は普通の修行をするんだってばよ!」
 肌を撫でられるたびにナルトは声をあげそうになるけれど、何とか抑えつつそう言った。
「わしからすれば、こっちの修行のほうがよっぽど普通だがなぁ」
 にやけつつも、自来也はナルトの服をだんだん脱がしていってしまう。
 焦ったナルトは、思いついたことを口にする。
「もう!こんなんならカカシせんせーに修行頼めば良かったってばよ」
「カカシだと・・・?」
 いきなり気に食わない輩の名前がナルトの口から出てきて、自来也はすかさず反応した。
 それに気がつかないナルトは、さらに言った。
「そうだってば。カカシせんせーならエロ仙人みたいにエロばっかじゃないし、優しいしさ」
 そこで、自来也は子供っぽく拗ねてしまった。
「ふん、わしもあのカカシの小僧も大して変わらないっつーの。そんなに言うんならやつのところへさっさと行け」
 しっしっ!と言った感じで手を振られて、ナルトもむっとしてしまう。
「物の例えだってばよ!別に本当にカカシせんせーに修行つけてもらおうなんて思ってないってばよ」
「ふ〜ん、あっそ」
 ナルトが一生懸命言っても、自来也は簡単に聞き流してしまう。
 それでもナルトは自来也に張り付いて言う。
「もう!オレってば、仙人にしか修行つけてもらいたくないってば!」
 その言葉に自来也は単純に喜ぶけれど、つい深読みをし始めてしまった。
 
 それはただ単にわしが三忍で強いから修行つけてほしいだけじゃ?
 もっと強いやつがいたら、ナルトは簡単にそいつに修行をねだるんじゃないだろうのぉ。
 
 なので、自来也は慎重にナルトに聞いた。
「・・・なんでわしじゃなきゃ嫌なんだ?」
「強くなるには強い人に教えてもらうのがいいに決まってるってばよ!!」
 自信満々にそう言われてしまい、自来也は複雑だった。
 強さを求めるナルトは師として喜ばしいことだったけれど、恋人としてはかなりへこんだ。
「じゃ、強きゃ誰でもいいわけか・・・」
 ぼそっと言った言葉はナルトには届いていなかったらしく、元気に自来也の腕を引っ張ると外に連れ出そうとした。
「さー!今日は夜までみっちり修行だってばよ!!」
 元気に言うナルトに、自来也はげっそりしてしまう。
「何でそんなに修行はりきってるんだってーの」
 今度はちゃんと聞き取れたらしく、ナルトはぱっと振り向くと、にこっと笑いながら言った。
「だってそれだけ沢山一緒に居られるし、修行も沢山できるし、一石二鳥だってばよ」
 その言葉に自来也は嬉しくなった。
 一緒に居られるから自分にだけ修行を教わりたいというのが本心なら、今度こそ本当に喜べるのにと自来也は思った。
「そうか?でもわしならそんなに長いこと修行してたらお前にちょっかいかけたくなって修行にならんかもしれんぞ」
 自来也はそこでナルトが本当はそれをちょっと期待してるような言葉がほしくて、そう言ってみた。
 けれど、予想に反してナルトは晴れやかに笑って言った。
「んなことないってば!仙人は教えるときは教える人だって分かってるもん。だから尚更オレってば仙人がいいんだってば」
 確かに、綱手探しのときは全くちょっかいをかけないで修行を終わらせることができた。
 けれど、もう状況は違うわけで。
「そ、そうか・・・?」
 それでも尊敬のまなざしで見つめられて、自来也は悪い気はしなかった。
 
 しっかし、こんなに信頼されてると本当に手が出せないのう・・・。
 
「でも我慢しきれずに手を出したとしても、わしは責任とらんからな」
 それでも誘うナルトが悪いと自来也は思ったけれど、それほど信頼しているのに、ナルトに手を出したら裏切ってしまうようでそう言っておいた。
 けれど、ナルトは顔を赤くしてうつむいたと思ったら、ぼそりと一言。
「い、いいってばよ・・・」
 真っ赤になっているナルトを見て、自来也は「ならさっそく!」と思って、手を出そうとした。
「でも!オレってば信じてるってばよ」
 が、とてもいいタイミングでナルトがそう言って、自来也はまた動きを止めてしまう。
 
 本当に、お前には驚かされる。
 何だか今日はわし、お前に負かされてばかりだし。
 悔しいから反撃してやろうか。
 
「信じるって、手をだすってことをか?」
 耳元でそう言ってやると、ナルトは案の定顔をもっと真っ赤にさせてしまった。
 
 やっぱりまだまだガキだの〜。
 
 そう得意に思っている自来也だけれど、ナルトはそんな勝敗なんて考えもしない。
 ある意味ナルトのほうが大人なのかもしれなかったけれど、それに自来也が気がつくのは一体いつになるのやら。
 
 
 


終わり



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