時間がかかりそうです。
 
 
「サスケくんって、ほんっと格好いいわよね〜」
 いきなり隣にいたサクラにしみじみとそんなことを言われては、驚きながらも黙っていられないナルトはすぐに言い返した。
「どこが〜!?サスケなんてクールそうにすかしてるだけだってばよ!」
「何をー!!ナルトのくせにサスケ君を馬鹿にすると許さないわよ!!」
「だって、ほんと・・・」
 ナルトはなおも反抗しようとしたが、サクラの強力なパンチで黙ることになった。
 
 けれどナルトはまだ心のなかでサスケを馬鹿にしたままだった。
 
 サスケなんて全然格好よくなんかないってば!
 任務の解散後に二人で歩いてるときとか、オレが話しかけると思いっきりどもりながら返事してるし。
 オレが先に歩いてると、足元ちゃんと見てないのかすぐにこけるし!
 それでやっと家に帰れると思ったら、いつも引き止めて結局なにも言わないし。
 っつーか、待つの面倒くさいからオレが勝手にサスケに一言理由言ってすぐに家に帰っちゃうんだけど。
 とにかく、サスケはそんなやつなわけで、サクラちゃんが格好いいなんて言うほどのやつなんかじゃないんだってばよ!
 
 
「ナルト、あんた今からサスケくんに好きな子がいるかとか好みのタイプはどんなのか聞いてきなさいよ」
 考えに浸っていたら、急にサクラに首根っこをつかまれてサスケの方向へと投げ捨てられた。
「ええ〜!?何でそんなつまんないことオレがしなきゃなんないの?」
「あんたはさっきサスケ君を馬鹿にしたでしょう。その罰よ」
 サスケは神様か!と突っ込みたかったが、また何か言い返したら今度こそ生きていられないと悟ったナルトは、大人しく言うことを聞くことにした。
 
「サスケ」
 今は草取りの任務中で、サスケは一人で自分の持ち場を作り、作業をしていた。
「な、何だ」
 
 ほら、またどもったってばよ!
 サスケのやつよっぽど草抜きに熱中してたんだ。だっさー!
 
 ナルトが結構ひどいことを考えているなんて知らないサスケは、内心どきどきしていた。
 
 な、何だ?ナルトが任務中に、というかあまりオレに話しかけないのにいきなり・・・。
 き、緊張するじゃねえか・・・!
 
 心の中でもどもりまくっているサスケの内心を知るはずもないナルトは、サクラに言われたとおりに質問した。
「えっとさ、サスケって好きな子いんの?」
「!!」
 ナルトはかなり面倒くさそうに聞いたのに、サスケは勘違いをしていた。
 
 な、ナルトがそんなことを照れながら聞くなんて!!
 ま、まままさかオレにっ・・・!?
 
「で?いるの?いないの?」
 サスケのやつは淡白だからどうせいないってばよ。
 
 なんて思っていたナルトだったが、いきなりサスケに手をとられてびっくりした。
「ああ、もちろんいる」
 目の前にな。
 
 なんて心の中で思っていても、実際口に出せないサスケはそれでも嬉しそうだった。
「?じゃあさ、その子ってどんな子なの」
「!!」
 ナルトは早く話を終わらせたそうなのに、サスケは勘違いをしていた。
 
 ま、まだこんなことを聞きたがるなんて!!
 や、やややっぱり本当にオレのことっ・・・!?
 
「で?どうなの?」
 サスケに好きな子がいるなんて意外だってばよ。
 
 これはぜひ聞かなきゃと思っていたナルトだったが、いきなりサスケの顔がいつにも増して真剣になったので、びっくりした。
「ああ、そいつはオレと同い年で金髪で目が青くてチビでウスラトンカチ・・・」
 調子に乗って言いすぎたのに気がついたサスケだったが、もう遅かった。
「サスケと同い年で金髪で目が青くてチビでウスラトンカチ?」
 しっかりナルトの耳に入っていってしまったようだ。
 
 やばい!ついナルトの可愛さにつられて本当のことを言ってしまった。
 どうするオレ!
 ・・・けど、流れにまかせてナルトに思いを告げてしまうのもいいのかもしれない。
 
 サスケはそう考えると覚悟を決めて、次のナルトの言葉を待った。
 ナルトはしばらく何か考えているようだったが、ついにまた話し出した。
「ふ〜ん。でも同い年にそんな子なんていたっけ?」
 ナルトらしい答えだったが、サスケは勝手に舞い上がっていたので、そのナルトの言葉についていけなかった。
「は?それはわざと言ってるのか」
「へ?何が」
 サスケは焦りながらも冷静にナルトに聞いたが、すぐに返ってきた言葉はやはりサスケの思うような言葉ではなかった。
 焦って自分を見失いかけているのか、サスケは慌てて質問しなおした。
「お前は同い年で黒髪黒目のナンバーワンルーキーとかいうすかしたやつが好きなんだよな?」
「なにそれ、なんかそいつサスケっぽいし。それにオレってばサクラちゃん命だってばよ」
「!!」
 サスケはそれを聞いた途端、絶望のどん底に落ちていった。
「・・・そうか」
 それだけ言うと、さっさとナルトの前から去っていこうとしたが、ナルトに止められた。
「なあなあ!サスケの好きな子ってだれだってば?オレってばそれはサクラちゃんに内緒にしておいてあげるからさぁ。だってもしばれたらその子サクラちゃんに半殺しされかねないしさ」
「じゃあ、半殺しにされろ」
 サスケはもうどうでもいいとでも言うように、ふらふらと力なく歩いて、少しでもナルトから離れようとした。
 
 もうこれ以上オレを虚しくさせんじゃねえ・・・。
 お前なんかサクラにチクってオレが好きなのはナルトだって悟られて半殺しでも何でもされればいいんだ。
 
 半分やけになっていたサスケは、もう話すことはないとでも言うようにナルトの前から去っていこうとした。
 けれどまたナルトに阻まれた。
「何だよ、わけ分かんねーの!教えてくれたっていいじゃんか」
 
 へっ!どうせ教えたって信じないくせに。
 本当にこいつ、自分が色んな人間に好かれてるって自覚ないよな。
 だからいつもオレは余裕なんかなくて、焦ってたりするんだけど。
 少しはオレの気持ちも分かれって。
 まあ、ウスラトンカチだからどうしたって無理なんだろうけどな。
 でも少しは一矢報いたいよな。
 
「・・・じゃあもしオレの好きなやつがお前だって言ったらどうする?」
 サスケはこう言ってもどうせナルトは信じないと思っていたので、一応言ってみた。
「んなことあるわけないってばよ!サスケ、冗談も言うんだ」
 案の定ナルトは信じない上に、冗談とまで言われてしまった。
「本当だったらどうするんだ」
「えっ・・・」
 いつも以上に真剣なサスケの表情にまたも驚き、ナルトはきょとんとしていた。
「どうするんだ」
 さらにサスケに言われて、ナルトは困ってしまった。
「どうって、んなこと言われても」
 困るってば・・・。
 
 最後の言葉は小さくて、うつむいて言ったので聞き取りにくかったが、サスケはしっかり聞いていた。
 よく見てみるとナルトの耳が赤く染まっていた。
 
 サスケは意外なナルトの反応に驚きながらも、確認したかった。
「ナル・・・」
「さ、集合〜!」
「!!」
 サスケが声をかけたときに、とてもタイミングよくカカシの声がかかった。
 
 奴め・・・!絶対わざとやりやがったな・・・!
 
「さ、しゅーごーしゅーごー!」
 サスケがナルトを見やったときにはすでに走っていってしまったので、後姿しか見えずに顔を確認することができなかった。
 けれど耳はまっかっかなままで。
「ナルト、あんたどうしたのよ。何だか顔が赤いわよ?」
「え、そう?走ったからじゃない」
 ナルトの言い方は何か隠してますと言う感じがもろ分かりな様子で、サスケを十分満足させた。
 
 まだしっかりとあいつの気持ちが分かんねえけど、少しは自信が持ててきたからまあいいか。
 いつか絶対無理やりにでも聞きだしてやるけどな。
 今日のところは勘弁してやるか。
 
 
 その時ナルトは。
 
 何でオレってば急に顔が赤くなったんだろ?
 でも、サスケのやつが変なこというからだってば!
 心臓もどきどきうるさいし。
 もしかしたらサスケのやつに風邪かなんかうつされたのかも!
 
 サスケはとても健康体だったのだけれど、ナルトの中でそういうことに片付けられてしまったようだ。
 これはまだまだ当分時間がかかりそうです。
 
 
 
 
終わり


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