19 ルックポン

(1) 犬小屋

パンで犬小屋を作った男がいた

パンの耳を柱にし

壁や屋根はよく焼いた硬いフランスパンを細く切り

根気よく並べた

床は柔らかい食パンを敷き詰めた

完成には1週間を要したが

出来映えは満足のゆくものだった

男は誇らしげに犬小屋の脇でパイプをくゆらせた

けむりはどこまでも空高く昇っていった

しかし犬小屋はその夜降った雨でぐしゃぐしゃに溶けてしまった

「雨があったか」

と男は思った

(2) ルッコラと犬獅子ー給食費はどこへ行ったー

給食費を忘れたことに気付いた犬獅子は

あわてて家に戻る

食卓の上にあったはずの給食費がない

ママに聞いてもママは知らない

純子さんはまだ寝ている

大薮君のママなら知ってるかも知れない

犬獅子は大急ぎで大薮君の家に電話をかける

誰も出ない

大薮君のママは朝早くから天下とりに出かけていたのだ

犬獅子はあきらめて学校へ行き 

事の次第を話して先生に許しを請うが

先生は許してくれない


先生は泣いている 

ママも泣いている

純子さんは布団の中で泣いている


そして給食費は意外なところから見つかった

その晩ママが作った「ルッコラと錦鯉の踊り焼き」の中にもぐり込んでいた給食費を

翌朝、犬獅子が便器の中に見つけたとき

大薮君のママはすでに天下とりの夢をあきらめていた


(3) 流通経路 

『流通経路を知るものは少ない

知れば知ったで語りたくなり

聞けば聞くほど知りたくなるのが流通経路というものである』




メニューへ