ビッグホーンシープ
(コロラド編)

またまた、デトロイト経由で
コロラド州デンバー行きの飛行機に乗り込む。
TedがRemiに、ことこまかに書いた
メモを渡して説明していたが、そのわけは
その空港に着いてわかった。
ヒロイ。ひろ〜い。
ふわ〜、である。
まずは、気を取り直して空港の地下鉄(なんていうの?)
のような連絡列車に乗る。
CだかDだか、忘れたけれど、とにかく出口まで。
歩いていくには遠すぎるのね。
さて。
バッゲージクレームは?と
階段を上りながらさがす。
人がうようよ。
「あ、Tedさんだ!」とRemi。
あ、ほんとだ。
あちこち、見回している。
背が高いから、私たちになかなか気付かない。
「Tedさん!」
「あ、よかった、すぐにわかりましたか?」
「ええ。まぁ」
私たちは、ニューヨークよりもリラックス。
もう、安心だもん。
車で2時間以上かかって、Tedの家に着くまで
Tedはひたすら、日本の禁煙運動がなってない、とかを
とうとうと。
日本に住んでいた時、禁煙運動を展開したのだそうな。
周りの景色は砂漠のよう。
何にもない。
草原のみ。
風に吹かれたまぁるい草がころがってくる。
あれ、なんていったっけ?
西部劇などで馬に乗った男の足元を
コロンコロンところがる
あの枯れた草。
こうしてころがってはどっかで落ち着いて
そこで根を張るのだそう。

さて、やっとこさ、着いたTedの家はひろ〜い。
奥さまの大学教授、Michiさんが出迎えてくださる。
Remiとは面識があるが、私とは初めて。
目が大きく穏やかそうな女性。
「いらっしゃいませ、お疲れ様でした。
よかったですね。ご親戚といい体面をされて…」
一足先にTedからすべての聞いていたMichiさんだった。
「みんないい人で、感激のご対面だったんですよね」
「そう、新聞にも載るんでしょ?」
「はい、来週くらいに」
一人息子のKenに紹介される。
彼は高校生16歳。
ドラエもんが大好きだそうで、部屋中に。
背の高いかっこいい青年だった。
お二人のいいところをとって生まれたみたいね。
地下の奥の部屋にベッドが二つ。
Kenがバンドのギターを練習する部屋の奥。
バンドの演奏もビデオでみせてもらった。
裏庭(ヤード)には時々リスが走る。
木の塀で囲まれた裏庭は、もちろんBBQもできる。
その裏庭だけで広さが600坪??
んまぁ。
滞在中、朝にMichiさんが作ってくれた
チーズトーストはとってもおいしかった。
4人でドライブに出かける。
コロラドの自然は雄大で空は真っ青。
山は岩。雪が残っていた。
有名人が来るというチョー立派なホテルにも
見学に入ったり。
Tedがふっとスピードをゆるめた。
「何?」
「見てごらん、あれ」
見ると道の端の方で何かの動物が数匹。
遠いのでよくわからない。
「ヘラジカだね」
「ヘラジカ?」
「英語ではビッグホーンシープっていうね」
大きな角の鹿?そのまんまじゃん。

雪の残る道で何を舐めているのかしら?
もっとズームをきかせてみよう。

あ、こっちを見たぞ。
ドキ。
ほんとに名のとおり、大きな角(つの)。
後ろから来る車は、す〜っとよけて通り抜けていく。
やがて彼らはこちらの車に気がついて
のろのろと山の方へ戻っていった。
「何してたんだろうね」
これはオトナたち4人のナゾだった。
帰国後して夕食の時に
話していたら、息子が言った。
「ん? 道を舐めてた? あ、それね、
塩分を補給してたんだよ」
「道に落ちているの?」
「雪が降ってたんだろ?
道路に撒いてある凍結剤には
ナトリウムが入ってんだよ」
「あ、そうなの それを舐めてるわけ」
ちょっと、息子を見直したわ。
Tedが言った。
「こうして観光で人をよく連れてくるのですが、
こんなに近くで
彼らを見られたのは初めてですよ」

翌日はショッピング。
案内された一画は素敵な落ち着いたお店ばかり。
なんでこうも人を惹きつけるものばかりなわけ?
「おねがい、私が何か買おうとしたら止めてね」
なんて、言うのも無駄だった。
その日の夕食はイタリアン。
席へ案内してくれた若い女性が
ずっと注文などを聞いて最後まで。
チップがもし、渡されればこの人のものになるのだろう。
Ted、Michi、Kenも一緒に5人でお食事。
しばらくしてから、Remiが言う。
「ね、あの人、かっこいいね。私の好みだわ」
「どの人?」
見れば、20代とおぼしき男性ウエイター。
「ああいうのがお好み?」
後ろのエプロンの紐が立て結びなのがとても気になるので
直してあげよう、なんて言い出す始末。
オイオイ。
こうして旅に出て
ウエイターやウエイトレスに頼んで写真を一緒に
写してもらう事は高校生なら、よくあると言うと
「お願い、あの人に頼んで」
「ちょっと、それマジ?」
「うん」
まったくミーハーなんだから。
Tedが、頭を振りながら(まいったなぁという感じで)
その彼に頼みに行く。
「あ、OKって頷いたみたいよ」と言うと
Remiったら、急いで
前髪を指でチャカチャカ直したりしてんの。
Kenは、やってられんという風情で
笑いながら顔かくしてる。
Michiは「キャハハ…」と
引きつりながら、汗をかいて大笑い。
椅子に倒れこんで、もう止まらない。
真赤になりながら、やってきた彼が言う。
「早く言ってくれたら、このテーブルをサーブしたのに」
そんなこと知らなかったのよ。
Remiに頼まれてツーショットの写真を撮る。
背中に手を回されて、Remiはごきげん。
30cm以上の差があるよ。
彼は大照れ。
「あ、待って。ついでに私も」と言ったら
Remiに、こづかれた。
半分あきれて大笑いしていたMichiさん、
「じゃあ、せっかくだから、私も」
その店の地下の独自のビール工場を見せてもらった。
Remiが言う。
「ちょっと、住所聞いてきてよ」
「どうすんの?」
「写真送るのよ」
「こぉんな日本のおばさんたちと写った
写真なんかいらんかも、よ。
彼女いるかも、だし」
「…そうかな。でも聞いてきてよ」
マッタク。
厨房の方にいる彼を手招き。
顔を赤らめて「はい?」
「すみません、お名前を…」
「あ、Matthewといいます」
Remiの今回の旅を少し説明して
彼が目を見張って、
おめでとうなんて言うのを聞きながら、バ〜イ。
車に乗ってから紙切れを手渡すと
「あれ? 名前だけ。住所は?」
聞かなかったのよ。
でもそれはナイショ。
これ以上、恥をさらしたくないもんね。
でも
おなかが痛いほど、泣きながら
笑ったのも久しぶり。
後日、できた写真を見てRemi曰く
「あ、これは実物の方が、かっこよかったね」
写真のMatthewは照れちゃって
ちょっとあご出してたから、ね。

飛行機の便の都合で、とはいえ、
Tedさん宅には
2泊もさせていただいた。
水や電気などを合理的に
つましく暮しておられる様子に
「消費大国アメリカ」って、勝手にひとくくりしては
いけないなと、思った。
現にTedは着るものには全然こだわらない。
暑くなければ寒くなければ、
そしてTPOに合っていれば、よし、らしい。
滞在したある一日。
Tedが近くの小学校で日本語を教えている
5,6人の早朝クラスを見学した。
ついでにその小学校の中も。
私は学校を見学するのが大好き。
その地に住む人たちの文化は
教育環境に如実に表れていることが多い。
子どもたちを大事にするのは当たり前だが
どう大事にしているか、はもっと大事。
印象深い学校だった。
Tedのクラスは
いろいろな道具やお菓子を使って、
楽しそうにやっていた。
’03年6月。
日本に来た彼らとその両親や教師達と
下呂温泉、飛騨高山へ同行したが
これも、いい旅だった。
特にその小学校の教師と会えたのはよかった。
彼らは自発的に「ヒロシマ」へ行ったのだ。
つらかったそうだが。
通訳も兼ねて来た、Kenは長く伸びた髪の毛を
ところどころ緑にカラリングしていた。
ウワオ。
聞けばおかあさんのMichiさんが染めてくれたのだそう。
う〜ん、若い子を育てたり、理解するには
生半可な“ココロ意気”ではあきまへん。

翌日。
デンバー空港に近い小さなホテルに泊まって
朝早くデトロイト経由で名古屋へ帰国。
夕方、無事に着いてRemiがTakaさんに電話。
私はバスで帰ると言ったのだが
Remiがどうしても私の家まで送ると言ってきかない。
「お願いだから送らせてよね」
空港から電話をしてあるので
玄関内には明かりが。
玄関を入ると夫が出てくる。
「ちょっとうちに入ってもらったらどうだ」
「うん、でも疲れていらっしゃるから、
もうそのままお帰りになるって」
夫が外へ出てくると
TakaさんとRemiは
夫に深々とお辞儀をしてくださった。
旅は大成功。
ありがとう、Remi、Takaさん。
そして、Johnたち家族。
Johnたち夫婦はショートコースで
日本語を勉強し始め、
Remiも英会話を
基礎から勉強し始めた。
完
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長い間、私のアメリカの旅に
おつきあいくださいまして
ありがとうございました。