「これ、おじさんの写真よ」
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私の祖父や祖母にあたる人からは
何度も何度も心のこもった手紙や、
プレゼントが送られてきたらしいわ。
あなたが訳してくれた
別の手紙を読むかぎりでは
何回かに一度くらいしか
こちらに届いていなかったみたいね。
無理もないわね。
1950年代のことで、
日本も混乱していたし。
父の弟のJohn さんは、父より
8歳も年下だって、聞いてたの。
父が生きていたら
今年72歳だから、Johnさんは
64歳くらい?
父の両親は離婚していて
私の祖父にあたる人は
食料品店を経営していたそうよ。
わりと大きかったみたい。
従業員は7人くらい、いたんですって?
そう手紙に書いてあったわね。
うちの仏壇のお位牌の裏には
父は19歳で亡くなったって、記されているの。
多分、母の字ね。
でもこのサイトには
20歳で亡くなったことになっているでしょ。
それもちょっと気になること。
Jennifer と、Jill っていう
30代の従姉妹がいるのね。
私は母が亡くなって、親類はほとんどいなくなったから、
なんだか心強いような気がするわ。
10月の初めに亡くなった母には
このニュースは間に合わなかったけれど、
でも、「ある人がインターネットで
さがしてくれてるのよ」って
それは伝えたわ。
ひょっとしてわかるかもって。
ベッドで
「そう」って、少しうれしそうだった。
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あ、そうそう。
確認に一番、手っ取り早いのは
母が持っていた古い写真を
パソコンで送ることだって
あなたが言ってくれたから
今日、持ってきたわ。
どれがいいかしら?
何十枚もあるのよ。
私も知らなかったの。
びっくりしたわ。
これはJohn さんの
10代のころの写真ね。
ブレザーが少し大きめね。

いい笑顔。
性格がよさそうよね。
これは
おじいさまの食料品店の中の写真

庭にいる家族の写真。
とても小さい写真ばかりね。
これはだれかしら?
わからない。
父が“赤ん坊”を抱いているのもあるの。
黒い軍服を着て……。
これも写真館で撮ってもらったみたいね。
この赤ん坊って、私かしら?
そうじゃない気もするわ。
だって、
この写真の父はなんだかつらそうだもの。
私って双子だったの。
双子の兄は生まれて
数ヶ月で亡くなったそうなの。
兄だったかもね、これ。
今まで、父に抱かれた記憶なんてないし、
父をほしいって思ったことも、あまりないの。
実感なんて全然ないわ。
でも
最近こうして父の写真を
見るようになったでしょ。
私は父にこうして抱いてもらったことも
あったんだなぁって。
私の右の肩のあたりに
父の腕があって……。
父はハンサムだったわね。
John さんにはあまり似ていない感じね。
私の息子に似てる気がするわ。
あごの線が……。
あ、若いころのおじいさまのもあるわ。
水着を着ているわね。
どれもこれも
こんなにセピア色になって。
母が亡くなった後、
押入れを整理してたら、出てきたの。
こんなにたくさん、
送ってきてたのね。
そう?
おじいさまの手紙はやさしくて
愛情があふれてる?
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Remiの祖父にあたる
人からRemiの母へ来た手紙。
宛先は九州だ。
「親愛なるKeiko。
あなたもRemi ちゃんも、お元気ですか?
Remi ちゃんは、もう大きくなったことでしょう。
私がクリスマスに
Remi ちゃんに送ったプレゼントは、
届きましたか?
手紙ももう何通も送っていますが、
届いたら、お返事くださいね。
妻も何度も手紙を出したそうですが、
届いていますか?
John は今、バージニア州の
母親のもとで暮しています。
だから、私は今一人で暮しています。
とてもさびしいです。
私の食料品店は改装して
少し大きく、きれいになりました。
経営は順調です。
……
今でもときどき、トミー(Thomas)が戦死したのが
悪夢であってくれたら、と思うことがあります。
でも、それはほんとうに起こったことなのです。
私がどんなに神さまに祈っても
この地球上で
私のいとしい息子
トミーに会えることは、もう決してないのです。
トミーと遊んでいる夢を
みることがあります。
悲しくて、悲しくて、
やりきれません。
耐えられない思いです。
あなたとRemi が、元気でいてくれること
とてもうれしいです。
体を大事にしてください。
また書きます。
あなたの父
T.Williams」
よく見れば、ところどころ
インクがにじんで字が不鮮明だ。
これは
小説や、ドラマではないのだ。
人間の子を思う心。
亡くなった息子の妻と孫を気づかう
心配、そして深い愛情。
書きながらこらえきれずに
突っ伏したのであろう、Remi のおじいさま。
これを書いたとき、
彼は多分、40代に入ったばかりだったろうか。
後にわかったのだが、
彼は心臓発作で45歳の時
亡くなったのだから。
この手紙を書いた時は、おひとりで
暮しておられたのだ。
読みながら、
私はあふれる涙を、抑えられなかった。
行間から
読み取れる誠実なお人柄。
息子の妻や孫を思うやさしい親心。
どんなに会いたいと思ったことだろう。
どんなに孫のRemi を抱きたいと思ったことだろう。
クリスマスには
心楽しくプレゼントを選んだりも、したのだろう。
Keikoさんに見てほしくて
自分の家族の
写真を送ってきたのだろう。
翻訳はこれでいいか、と
Remi に渡す前に
何度も読み返し、そのたびに
泣けた。
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