あなたのご親戚が…

この7月のことだったわ。
知人のご紹介で、ある人とお茶を飲んだの。
Ted さんていうの。
アメリカ人で、今はアメリカに住んでみえるけど
日本に25年も住んでおられたので、
日本語がとてもお上手なの。
それに奥様も日本人だし
息子さんもかっこいい人。
私、Tedさんの
ブルーの目を見たら
なぜか思わず泣けちゃったの。
あ、私がアメリカ人とのハーフだってこと、
あなたには2年前に話したわね。
父は私が1歳になる前に、朝鮮戦争で
亡くなったのだけど、これも話したことあるわよね。
父は九州に駐屯していたアメリカ軍の若い兵士で。
母と出会って恋に落ち、
結婚して、きちんと籍も入れたの。
アメリカのご両親もとても喜んでくれて。
あちらからの仕送りと、父の貯金で
家を買って、住んでたって聞いてるわ。
朝鮮へ出征したけど
除隊になったら一緒にアメリカへ帰って
暮すんだって言ってたそうよ。
父がどういう経緯で亡くなったか、
私は詳しくは知らないの。
でも
一緒にいた兵士が、父の形見のブレスレットを持って
母に伝えに来てくれたって。
亡くなる時、「自分には日本に妻と子どもがいるので
これを持って行ってほしい」って。

その後、三重県に移ってきて
私が高校卒業してから
名古屋に来たの。
しばらくして
私も結婚して……。
14,5年前になるかしら?
父のことを調べようとしたこと、あったの。
息子がある年代になれば、
必要な事だと思ったし。
その手紙の住所へも手紙をだしてもらったり
したけど、返事は来なかった。
友人に頼んで、東京のアメリカ大使館や
神戸の領事館へも行ってもらったりしたけど
何の手がかりも得られなかった。
で、あきらめることにしたの。
私たち、幸せに暮していたし。
でも父のお墓参りくらいは
いつかできたらなぁって
どっかで思ってはいたけれど、ね。

Ted さんが、私の事情を知ると
「あなたのおじい様から、お母様へ来た手紙が
あるのですね、読んで差し上げましょうか?」
それで、もう長い間、見たこともなかった
手紙をさがし出したの。
私、英語なんて、読めないし。
ペン書きでとても読みづらそうだったわ。
Ted さんが全部を訳してくれた後
「オハイオだということがわかっているのだし
インターネットで調べてみましょうか」って
アメリカ政府が出している
朝鮮戦争のサイトを検索してくれたの。
私の知人のうちで、ね。
ベトナム戦争や、第二次大戦のも
あるみたいよ。
私の父は
Thomas.B.Williamsって、いうの。
Thomas Williams っていうのは
わりとよくある名前で何人もいたわ。
でもミドルネームがBで
オハイオ州出身は、一人だけだった。
生年月日と亡くなった日だけが書かれていたわ。
でもそこに親戚や、手がかりになりそうなことは
何も書かれていなかった。
もちろん、写真なんてついていなかった。
父のサイトの下の方に
書き込む欄があってね。
Tedさんが
父のサイトの情報欄に
書き込んでくれたの。
もちろん、英語でよ。
「この夏、私は日本で、
Thomas の娘さんに会いました。
彼の友人、あるいは親戚の人がいたら
ボクにメールをください」
それが、7月のこと。
でもそれっきり
私も忘れていたの。

10月の半ばのある日、
Ted さんから一本の電話。
興奮を抑えきれない声で。
「Remiさん、
あなたの
ご親戚が見つかりました」
私の従姉妹だっていう女性から
電話があったって……。
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