「奇跡がね、起きたの」







滑走路をガタガタとひた走っていた
ジェット機の音が、一瞬しなくなったと思った瞬間
機体はふわっと浮き上がった。


丸い窓に小さく見える町が、
ぐんぐんと下に遠ざかる。

名古屋は快晴。


2002年12月28日、土曜日。
午後13時05分。

名古屋空港を定時に離陸した
NORTHWEST航空旅客機内で
RemiとTakaさん
(彼女の夫)と私の3人は
互いに顔を見合わせた。
ちょっぴり、緊張気味。

これから始まるこの旅を思って
私はすうっと、深呼吸。

テレビの画面を見ながら
時計を現地時間に合わせる。

28日昼過ぎに日本を飛び立ち
11時間と少しで
同じ28日の昼過ぎにアメリカに着くことになる。


2001年にデトロイトへ行った4週間の後、
もうしばらく海外はいいや、と私は思った。
2、3回分の旅だったし。

それが……。




2002年10月下旬の、ある朝。

ボランティアテーブルで
おしぼりをたたんでいた私の前に
Remiがすっと座った。
いつものように、作業は静かに。

しばらくして
「あのね」と、Remi。

「ん?」と、私が顔を上げると
彼女が言った。

「奇跡がね、起きたの」